福島県水産試験場研究報告 第10号 - 036/073page
測できず、3年魚、4年魚の回帰状況を待ってからの判断となろう。
従来の予測手法と新たな予測手法
福島県ではある年の放流年級群が高い回帰率を示す指標として、2年魚、3年魚での来遊尾数が多くなる必要があり、年魚組成だけでは推察できない。なぜなら、来遊尾数の多い年、少ない年でもその来遊した年魚構成は同じ場合が有り得る。福島県では、1990年の2〜6年魚の各年魚組成は各々4.3%、10.7%、74.7%、10.2%、0.1%、その来遊尾数は616千尾であるが、1999年の2〜6年魚組成は各々0.2%、8.6%、77.0%、12.8%、1.4%、その来遊尾数は273千尾であり、両年の来遊尾数の差は大きい。
この来遊尾数の予測手法について従来と新たなもので比較したが、有意な差は認められなかった。この原因としては、従来の方法は回帰年魚間の相関を調べていないが、各年魚組成比を求め各年魚の来遊実績に乗じて翌年の来遊尾数を予測したものであることから、結果として年魚間に相関関係式があったものと考えられ、両者に有意な差がでなかったと推察する。各年魚組成比は相関式のXの係数と考えれば、3〜6年魚を全て相関式から予測していたものと考えられる。
しかし、従来の予測手法は前述のように来遊した各年魚組成のデータをもとにしているが、事前にある年の放流年級群の総回帰尾数の予測はできない。また、2年魚の来遊尾数が0尾であれば、 次年度予測の3年魚が0尾となる危険があり、現実とのずれが生じる。
一方、新たな予測手法では、既往のデータをもとに関係式をもとめ、過去にもどって予測値を推算したので、正当に評価することはできない。今後の予測と実績値を比較するとともに、1994年から木戸川、請戸川の他に宇多川でも年魚組成のモニタリング調査が実施されており、このデータの蓄積から3河川の動向を比較検討する必要があろう。
現段階では、新たな予測手法では早期(2年魚の回帰状況)に放流年級群の回帰予測(2〜6年魚の合計)ができるという利点があり、予測精度は従来のものと同等といえよう。
要 約
秋サケ来遊変動とその予測手法について、来遊した年魚組成データをもとに再整理を行った。
近年の来遊変動をみると、1996年以降の来遊尾数の減少は、北海道〜福島県までの太平洋沿岸に接する各地域でみられる。
1990年以降の来遊変動の相関は福島県と岩手県、宮城県に相関が高い傾向にあり、福島県と北海道の相関は低かった。
福島県の12河川の来遊変動は、宮城に流入する阿武隈川、宮城県に最も隣接する宇多川、茨城県に隣接する鮫川は、県全体および他河川との相関が低く、県沿岸部の中央部に位置する河川は、互いに相関が高く、かつ県全体との相関も高い傾向にあった。
放流年級群別の各年魚の相関式から、3年魚、4年魚の来遊尾数の予測は可能と考えられた。
各年魚間の相関では、2年魚、3年魚、4年魚が多く来遊しないと、次年度の総来遊尾数が少なくなる。
ある年の放流年級群が高い回帰率を示す指標として、まず2年魚の来遊尾数が多いことあげられ、早期に放流年級群の歩留まりを判断する1材料と考えられた。
従来の予測手法と新たな予測手法について比較したが、有意な差は認められなかった。この原因としては、従来の方法も結果として各年魚間の相関式を取り入れた方法となっていた。各年魚組成比は相関関係式のXの係数と考えられ、3〜6年魚を全て相関式から求めたもの同様であり、新たな手法と類似していた。
従来の手法では、来遊した年魚組成構成のデータをもとにしているが、2年魚の来遊状況から