福島県水産試験場研究報告 第10号 - 062/073page
が摂餌していることが多かったが、1996年5月8日と27日のメロード(全長120〜160mm)では空胃率60%と空胃個体が多かった。同年5月16日や翌年の同時期のメロードではほとんどが摂餌していたことから、漁獲時刻や漁獲時の吐き出し等を無視すれば、漁獲位置(生息場所)や年により餌料環境が大きく異なっていることが示唆される。また1995年2月のコウナゴが空胃率30%と、比較的空胃個体が多かった。この標本は他に比べ時期が早く、全長20mmモードと小型のものであったものの、この理由によるとは推察できない。
次に1尾当りの摂餌量は体重の0.5%未満の個体が大半であり、魚体の大きさや時期等による目立った特徴はなかったが、1996年3月4日のコウナゴ、1996年5月16目のメロウド、1997年4月25日のコウナゴでは胃内容物重量比が高い個体が散見した。また摂餌量が1g以上で胃内容物重量比が6%以上の個体も見られた。これらのことから、1尾当りの摂餌量には相当な個体差があることが示唆される。
胃内容物の出現種査定結果を見ると、カイアシ類が年や時期、魚体の大きさを問わずどの標本にも多く出現し、Paracalanus sp.、 Centropages sp.、 Corycaeus sp.、 Pseudocalanus minutus、Calanus sp.などが特に多かった。他の出現種では、1995・1996年3月のコウナゴ(全長30mmモード)ではミジンコ類のPodon sp.、1997年4月のコウナゴ(全長40mmモード)では二枚貝の幼生、1997年5月の大型のコウナゴ(全長90mmモード)ではアミ類、1996年5月のメロウドではオキアミ類、1997年5月のメロウドでは珪藻類が多く見られたのが特徴的であった。各々の標本により優先種や種組成及び出現個体数等が異なっており、そこから年や時期、魚体の大きさによる特色を抽出することはできなかった。また、イカナゴの主餌料はカイアシ類といえそうであるが、摂餌状況同様、餌料環境の複雑さが示唆された。
最後に、本調査を行う機会をいただいた水産庁及び東北区水産研究所、並びに種の査定を行っていただいた新日本気象海洋株式会社に感謝申し上げます。
要 約
1.1995〜1997年の2〜5月に、イカナゴの胃内容物調査(胃内容物重量、出現種及び個体数)を行った。
2.コウナゴもメロウドも大半が摂餌していたが、1尾当りの摂餌量は体重の0.5%未満の個体が多かった。
3.胃内容物に出現した種はカイアシ類が最も多く、ミジンコ類や二枚貝の幼生、アミ類やオキアミ類、珪藻類が多く見られる場合もあった。
4.摂餌状況と出現種は年や時期、魚体の大きさや生息場所によって異なり、イカナゴの餌料環境の複雑さが示唆された。