福島県水産試験場研究報告 第10号 - 071/073page

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係を6ケ月後までのラグ相関も試みたが、東西変動の関係は見いだせなかった。しかし、近海黒潮北限位置が高緯度にあったとしても、沿岸部への暖水波及が弱ければ、陸地と黒潮続流の間隙に親潮系冷水が差し込み、南北シーソー変動が起こりやすい海況パターンにとなることが想定され、別の指標での解析も必要と思われた。

 これら解析の最終目標は、浮魚を中心とした漁況予測となるが、そのためには当然水温予測が重要である。今回の解析で、当県沿岸域の水温変動は、広範囲な東北海域全体の親潮、黒潮の南北変動で約70%が、宮城県沖に形成される小規模な水塊からの影響で約12%が説明できると考えられた。今後は、第2主成分の変動要因の再解析を進めるとともに、抽出された要因に重点を置いて、その変動の時間スケールを解析し、当県海域の水温予測(自己回帰予測)の可能性を検討する予定である。最後に、解析全般にわたりご指導いただき、近海黒潮の北限緯度、塩屋埼からの黒潮離岸距離等の貴重なデータを提供いただいた、東北区水産研究所伊藤進一氏に謝意を表します。

要   約

1.当県海域の経年変動特性を主成分分析から導出されたスコアの時系列から、事例解析、コンポジット解析を用い検討した。
2.主要成分は、各主成分の寄与率の落ち方から第2主成分までと判断し、第1、2主成分について変動要因を考察した。
3.第1主成分(寄与率約70%)は、全体変動を示し、東北海域全体における黒潮系水、親潮系水の変動(主に南北変動)により引き起こされていることが、また、当県沿岸域での影響は、黒潮系暖水より親潮系冷水の影響がより強いものと思われた。
4.第2主成分(寄与率約12%)は、南北シーソー変動を示し、三陸南部に一時的に形成される小規模な冷水域、暖水域が影響していることが推測された。しかし、広範囲なデータを利用した解析により再度確認する必要がある。

文   献

1)吉田哲也:福島県沿岸の水温データ解析-U、福島水試研報、9、1-6、(2000).
2)松本育夫:福島県沿岸の水温データ解析-T、福島水試研報、8、59-67、(1999).
3)伊藤進一他:東北海区沿岸定線100m水温および定地水温の経年変動特性について、平成10年度東北ブロック水産海洋連絡会報、29、41-54、(2000)


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