ふくしま文学のふる里100選-006/30page

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埴谷雄高 埴谷雄高(はにや・ゆたか)
明治四三・一・一〜本名般若豊。台湾生。祖父は相馬藩士。本籍は相馬郡小高町岡田字山田。明治維新後、祖父は土着農業を営むが没落。そのため父が台湾で製糖社員として働き抵当に入った相馬の田畑を取りもどしたが、雄高の代で手放した。『闇のなかの黒い馬』『幻視のなかの政治』等

臼井吉見 臼井吉見(うすい・よしみ)
明治三八・六・一七〜昭和六二・七・一二、長野県生。東大国文科卒後の昭和六年から十年まで県立双葉中学校の国語教師として勤務、新婚生活もここで過ごした。臼井が第二の故郷と呼ぶほど愛着の土地となった。双葉町図書館に「臼井吉見コーナー」がある。東京へ出てからは雑誌編集者、文芸評論家、小説家として才能を開花させた。評論『人間と文学』『戦後』『蛙のうた』小説『安曇野』。

真尾悦子(ましお・えつこ) 
大正八・一〇・一八〜、東京生。昭和二四年から三七年まで、いわき市に在住。同地に題材を得た作品としては他に『旧城跡三十二番地』『地底の青春』等がある。

星新一(ほし・しんいち) 
大正一五・九・六〜、本名親一。東京生。星一の長男で昭和四三年に日本推理作家協会賞を受賞したほか、ショート・ショート作家の第一人者である。

の倉庫に案内された。会計さんの、私設図書館、三猿文庫である。五万冊の蔵書がぎっしりと詰まっている中で、書籍の修理係の老婦人が一人、テーブルにむかって静かに糊をつかっていた」。

100 人民は弱し官吏は強し
星新一
小説  昭和四二年(一九六七)
人民は弱し官吏は強し
 いわき市生まれの星一(ほしはじめ)は、アメリカ留学を終えて帰国すると三五歳で衆議院議員に当選した。次に明治三九年に創立した製薬会社は「クスリはホシ」の看板で、全国に販路を拡げた。大正期に入るとモルヒネ、コカインなどアルカロイド製薬にも成功したが、出る杭は打たれる。政党の対立もあって、官憲は執拗に妨害、阿片事件をでっち上げて星を有罪にしようとしたばかりか銀行にも圧力をかけた。事件は結局無罪になるが、会社の信用は大きく傷つき、刀折れ矢つきてしまう。星は決算株主総会で経過報告のあとこうつぶやいた。「人民は弱し官吏は強し」。星には、この前編ともいえる『明治・父・アメリカ』がある。これには祖父、父の人となりがいわきの風土の中に描かれている。

ふくしまゆかりの文学者たち
ふくしまの文学賞受賞者

●芥川賞●
 故芥川龍之介を記念して昭和10年に創設され、無名もしくは新進小説家の登竜門として権威あるものとなっている。本県出身・ゆかりの受賞者と作品は次のとおり。
 
第4回(昭11下)富沢有為男「地中海」東陽8月号
第7回(昭13下)中山義秀「厚物咲」文学界4月号
第18回(昭19下)東野辺薫「和紙」東北文学10月号
第106回(平4上)松村栄子「至高聖所」海燕10月号
第111回(平6下)室井光広「おどるでく」群像4月号

 なお、芥川賞と同時に創設され、新進の大衆文芸作品を顕彰する直木賞には、残念ながら本県からの受賞者はいない。

●福島県文学賞●
 昭和23年に創設されて以来、小説、詩、短歌、俳句の4部門において県内の優れた文芸作品を表彰しており、地方の文学賞としては全国でも有数の歴史を持っている。
 この100選中の受賞者は次のとおり。

第1回(昭23)小説部門
 河内潔士(川内康範)
 「天中軒雲月」
第4回(昭26)小説部門
 岩間芳樹「岩間芳樹ラジ
 オドラマ選集」

 また、歴代審査委員には、小説部門の富沢有為男、東野辺薫、荒正人、早乙女貢、岩間芳樹、詩部門の田中冬二、草野心平、短歌部門の山本友一、俳句部門では加藤楸邨、金子兜太らがいる。

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