ふくしま文学のふる里100選-021/30page

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中通を舞台とした文学
吾妻山

7 山椒大夫
森鴎外
小説  大正四年(一九一五)

 厨子王は関白師実(もろざね)に「お前は誰の子ぢゃ。何か大切な物を持ってゐるなら、どうぞ己(おれ)に見せてくれい」と言われ「わたくしは陸奥椽正氏(むつのじょうまさうじ)と云うものゝ子でございます。父は十二年前に筑紫の安楽寺へ往った切り、帰らぬさうでござゐます。母は其年に生れたわたくしと、三つになる姉とを連れて、岩代の信夫郡に住むことになりました」と、父を尋ねて母子が越後へ行く途中で山椒大夫に捕らえられた物語。『山椒大夫』は大正四年『中央公論』一月号に発表。素材は浄瑠璃本から得た。説経節にも同話があり全国各地に広まる。厨子王の父の岩城判官正氏は福島弁天山の椿館に住んだといわれるが、本宮の菅森館説や、いわき小名浜の住吉館説、三春説など多いが、鴎外の創作で伝説とは別の物語。


13 女坂
円地文子(えんちふみこ)
小説  昭和三二年(一九五七)

 福島県大書記官・白川行友の妻・倫(とも)の半生記。前半の舞台は明治一四、五年の福島町の県庁から五、六町離れた「柳小路」にあった官邸で、その小路名はフィクション。暴虐な高官の妻として、夫の妾選びまでさせられ、夫の多くの乱行の後始末をしながら「女の坂」のなかで死んだ明治女の忍従の悲しさを見事に表現している。三島由紀夫は『暗夜行路』に匹敵する作品と賞讃、第一〇回野間文芸賞を受けた。


14 松川裁判
広津和郎
評論  昭和二九年(一九五四)
松川裁判
 東北本線松川駅付近で何者かの工作のために列車が脱線転覆したのは、昭和二四年八月一七日のことであった。当局によって犯人として逮捕された人々の文集『真実は壁を透して』を読んだ広津和郎は、作家的感性によって無実を直感。厳

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