ふくしま文学のふる里100選-024/30page

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諏訪三郎(すわ・さぶろう)
明治二九・二・三〜昭和四九・六・一四、現在の郡山市湖南町赤津生。東京で『中央公論』の編集に携わり、後に大衆文学に転じた。『家』『応援隊』等がある。

菅生 浩(すごう・ひろし)
昭和一三・六・一〜、郡山生。『巣立つ日まで』で日本児童文学者協会新人賞。『赤い巣箱』『ボーイフレンドは転校生』『赤い落下傘』等。

杉森久英(すぎもり・ひさひで)
明治四五・三・二三〜、石川県生。作家島田清次郎の波瀾の一生を描いた秀作『天才と狂人の間』で直木賞を受け、伝記文学の分野で活躍。

中山義秀 中山義秀(なかやま・ぎしゅう)
明治三三・一〇・五〜昭和四四・八・一九、西白河郡大信村生。安積中学から早稲田大学に進み、横光利一と同じ下宿で、文学に志すが文壇デビューは遅かった。小説『厚物咲』で芥川賞。『七色の花』『芭蕪庵桃青』等。

舟橋聖一(ふなはし・せいいち)
明治三七・一二・二五〜昭和五一・一・一三、東京生。『雪婦人絵図』『花の生涯』等、独自の恋愛文学の世界を確立した。

松本清張 松本清張(まつもと・せいちょう)
明治四二・一二・二一〜平成四・八・四福岡県生。昭和二七年に『或る「小倉日記」伝』で芥川賞受賞、その後、歴史小説などで多くの傑作を残した。
霞ヶ城(二本松市)霞ヶ城(二本松市)
長沼城の碑(長沼町)長沼城の碑(長沼町)
中山義秀の生家(大信村)中山義秀の生家(大信村)

44 大風呂敷
杉森久英
小説  昭和三九(一九六四)

 大風呂敷を広げるかのような意表をつく企画力と抜群の実行力で、明治・大正時代の政界を疾風のごとく駆け抜けた傑物、後藤新平の伝記小説。青雲の志を抱いて若き日の新平は生まれ故郷の岩手県水沢から、須賀川の県立病院に付設された医学校に遊学した。「病院は、須賀川の北端あたりを、奥州街道からわずかばかり入った高台にあって、眼下には釈迦堂川を見おろす景色のいいところであった」「新平はその身装(みなり)のみすぼらしさに反して、色は白く、目の青みがかった、精気あふるる美男子で、須賀川の子女の血を沸かせたことは事実である」。また、本県にかかわりの深い相馬事件についても、この作品はかなりの紙数を費やしている。


45 碑(いしぶみ)
中山義秀
小説  昭和一四年(一九三九)
碑
 「峠に一基の碑が立ってゐる。三重の台石の上にたち、高さ一間ばかりのかなり堂々としたものである」。この作品に登場する斑石高範、茂次郎、平太の三兄弟の一人、茂次郎を記念した碑である。碑を建てたのは茂次郎の門弟達で、「茂次郎が朝々旅人を送って、此處の野石に腰かけ江戸の方を眺めてゐた、彼の生前の姿を偲んで峠に記念の碑を建てた」のだ。この事から『碑』の題名が来ている。斑石三兄弟の辿った人生は激烈であった。山間の小藩(長沼)にも明治維新の波が寄せ、尊攘派の平太は、兄高範によって隠居所に蟄居(ちっきょ)させられ発狂、母を殺害。高範は平太と二時間近くも死闘を続け、弟を斬殺。茂次郎は水戸天狗党に参加し敗走、峠近くの宿場に住みつき、村人に剣道を教え旅人の世話をして世を終わる。兄高範は維新後は金融業者になった。歴史は兄弟の運命を翻弄した。


46 猫と泉の遠景
舟橋聖一
小説  昭和三八年(一九六三)

 『和泉式部日記』を枕もとに遺して、維子(つなこ)の叔母伊勢子は愛人との情痴のもつれから、石川町の猫啼(ねこなき)温泉で自殺した。美しい叔母にあこがれていた維子はその愛人に接近し、自分もまた不倫の愛欲のなかに身を沈ませてしまう。和泉式部ゆかりの地という伝承のある猫啼温泉を訪れた維子が、叔母の幻影を視る場面。

「暗い女湯で、湯を浴びる音がする……向うから裸の女が歩いてきて、それがまざまざとシルエットになった。一瞬その女が、右手の肱(ひじ)に、まっ黒な仔猫を抱いているように見えた」。薄幸の佳人のイメージを遠景に明滅させながら展開する耽美官能的な連作小説『ある女の遠景』のなかの一篇。


48 天才画の女
松本清張
小説  昭和五三年(一九七八)

 銀座の一流画廊に画を売込みにきた新人画家・降田(おだ)良子は、画壇の注目をあつめる。彼女の制作に秘密を感じたライバル画廊の支配人は、真相を求めて、良子の郷里へ向う。そこは東北本線を上野から二時間半、支線で十五分の町「真野町」(モデルは三春町と石川町)だった。画商の商算と美術評論家の欺瞞が交錯する長編サスペンスである。

三春の町並み三春の町並み

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