サクシード中学校国語から高等学校国語へ-012/43page
論理的文章の理解(3) 構成の理解をもとに要旨の把握へ
◇中・高のつながりを考えたときの指導上の課題と課題解決のための指導のポイント◇
文章を大きなまとまりとしてとらえ要旨を把握するためには、構成の理解が不可欠である。筆者は、自分の考えを明確に表現するためにどのようにしたら最も効果的かを考えている。その構成の基本構造を見抜く力を育てることが中・高ともに課題となる。この課題解決のためには、次の点に留意することが大切である。
中学校 ■キーワード、キーセンテンスを的確に把握し、言葉や文章全体を支える対比的な思考方法などに習熟させること。
高等学校口文章構成の基本である「起承転結」「序論・本論・結論」「頭括法」「尾括法」などの理解を図ること。
口文章を書くとき、自分の主張をどのように構成したらより効果的であるかを常に意識させること。
水の東西 山崎正和
「鹿おどし」が動いているのを見ると、その愛嬌のなかに、なんとなく人生のけだるさのようなものを感じることがある。かわいらしい竹のシーソーの一端に水受けがついていて、それに見の水が少しずつたまる。静かに緊張が高まりながら、やがて水受けがいっぱいになると、シーソーはぐらりと傾いて水をこぼす。緊張が一気に解けて水受けが跳ね上がる時、竹が石をたたいて、こおんと、くぐもった優
しい音を立てるのである。(第一段落)
見ていると、単純な、緩やかなリズムが、無限にいつまでも繰り返される。緊張が高まり、それが一気にほどけ、しかし何事も起こらない徒労がまた一から始められる。ただ、曇った音響が時を刻んで、庭の静寂と時間の長さをいやがうえにも引き立てるだけである。水の流れなのか、時の流れなのか、「鹿おどし」は我々に流れるものを感じさせる。それをせき止め、刻むことによって、この仕掛けはかえって流れてやまないものの存在を強調していると言える。(第二段落)
私はこの「鹿おどし」を、ニューヨークの大きな銀行の待合室で見たことがある。日本の古い文化がいろいろと紹介されるなかで、あの素朴な竹の響きが西洋人の心を魅きつけたのかもしれない。だが、ニューヨークの銀行では人々はあまりに忙しすぎて、一つの音と次の音との長い間隔を聴くゆとりはなさそうであった。それよりも窓の外に噴き上げる華やかな噴水のほうが、ここでは水の芸術と
〔中・高共通の指導ポイント〕
構成を考える上で大切なことは、繰り返して用いられているキーワードの把握と対比的な文章構造の把握である。
また、一つの言葉から自由に発想を広げていくことにより柔軟な考え方が生まれ、論理の展開を予想する力(深い理解力)も育まれていく。
○題名から内容の予想をする
本文の読解に入る前に、題名「水の東西」から考えられることを、一人一人の立場で、あるいはグループで自由に想像させることも理解力向上のための一つの工夫である。この他にも、たとえば、「おそれという感情」(唐木順二)においては、なぜ一般的な「恐れ」という漢字を用いていないのかを考えることにより、筆者が「畏れ」をも含めていることがより深く理解される。同様に「失われた両腕」(清岡卓行)、「仮面の思想」(加藤秀俊)、「理解と誤解」(鈴木孝夫)(いずれも高校「国語1」)などの論理的文章を読む際には、題名から予想されることをもとに本文に入ることにより、生徒の興味・関心をひきだすことができる。
○繰り返される言葉
論の展開を把握させるためには、文中で繰り返される言葉に注目させることが大切である。たとえば、「水・時・流れ.