サクシード中学校国語から高等学校国語へ-018/43page
◆ルントウとわたしの呼称に着目した授業展開の例 中学校
「故郷」の回想場面と再会場面のルントウとわたしの呼称に着目して、二人の心情を対比させて考えさせる授業展開の一例である。
ルントウの私に対する呼称が変わった原因は何かを考えさせ、社会的な身分や境遇の差や貧しさによる卑屈さなど、生徒一人一人の考えを深める授業展開を図っている。また、最後に主体的な読みという観点から、せりふを表現させることによって理解と表現との関連づけを図っている。
本時の目標 ○ルントウとわたしの呼称の違いに着目させ、ルントウの心情の変化とわたしのルントウに対する思いをまとめることができる。 課程 学習活動・内容 時間 指導上の留意点 課題把握 1 本時の学習課題を確認する。 5(分) ○身近な呼びかけに、人問としての真実が表れてくることを示唆する。 ルントウの「わたし」に対する呼称が変わった原因や気持ちについて考えよう。 課題追求 2 ルントウと「わたし」の呼称について発表しよう。 35(分) ○対照的な回想場面と再会場面にしぼり、二人の呼称の変化をとらえさせたい。 3 回想場面と再会場面の二人の呼称からそれぞれの気持ちや態度についてどのような違いがうかがわれるだろうか。 ○回想場面では、ルントウとわたしがどんな人間関係であったかを読みとらせたい。 ・兄弟のような間柄 ○実際に二人の間柄を確認する。 ・仲がよい ○「おまえ」「おいら」という呼称などを手がかりに考えさせる。 ・本当の友達 ○「ああ、ルントウの心は神秘の宝庫で、わたしの遊び仲間とは大違いだ」に注目させる。 ・人間的なつながり ○「だんな様」とあいさつしたルントウの気持ちを中心に考えさせる。 ・身分差を感じさせない ○「ルンちゃん」から「彼」に変わった「わたし」の気持ちを考えさせたい。 ・ルントウ よそよそしい態度 ・「ルンちゃん」は昔からの親愛の情がこもった呼称。 社会的な身分を意識 ・「彼」は心の隔たりを感じさせる呼称。 ・わたし 身震い ○「わきまえもなく」という表現に注目させる。 悲しむべき厚い壁 ○単なる子ともから大人への成長の変化だけではない点に気づかせたい。 4 ルントウの「わたし」に対する呼称が変わった原因や気持ちについて考えよう。 ○「でくのぼう」という表現から、当時の社会状況を読みとらせる。 ・苦しみや打ちひしがれた生活 ○回想場面でのルントウと対比させながら考えさせる。 ・社会的な身分や境遇の差 ○主体的な読みをすることにより、表現力を高める工夫をする。 ・貧しさによる卑屈さ ・「彼は突っ立ったまま」 ・「喜びと寂しさの色が顔に現れた」 ・「唇が動いたが、声にはならなかった」 ・当時の社会制度のため ・物騒な世間、乱れた社会 5 ルントウになりきって、「だんな様!・・」のあとの、心の中のせりふをまとめ、発表しよう。 まとめ 6 本時のまとめをする。 10(分) ○語句に着目した読み方を意識させたい。 7 次時の学習課題を確認する。 心境を表す形容詞に着目してわたしの心情をまとめよう。