サクシード中学校国語から高等学校国語へ-020/43page
文学的文章の理解(2) 詩 言葉に込められた作者の思いをつかむ
◇中・高における指導上の課題と課題解決のための指導のポイント◇
韻文においては作品を楽しく味わう前に、食わず嫌いのまま作品のよさに気づかない生徒が比較的多いことが課題としてあげられる。特に詩においては、詩特有の技法の理解不足から、作品の理解が進まない場合もある。したがって、次の点に留意して指導に当たることが望まれる。
中学校・高等学校共通
☆詩は難解であるという先入観を排し、詩を読むことの楽しさを味わわせること。
☆朗読や暗唱を通して情景や心情をイメージし、主題の把握ができるように配慮すること。
☆白分の感性を大切にして鑑賞する力を高めるとともに、自ら表現する喜びを味わわせる工夫をすること。
夕焼け 吉野弘
いつものことだが
電車は満員だった。
そして
いつものことだが
若者と娘が腰をおろし
としよりが立っていた。
うつむいていた娘が立って
としよりに席をゆずった。
そそくさととしよりが座った。
礼も言わずにとしよりは次の駅で降りた。
娘は座った。
別のとしよりが娘の前に
横あいから押されてきた。
娘はうつむいた。
しかし
又立って
席を
そのとしよりにゆずった。
としよりは次の駅で礼を言って降りた。
娘は座った。
〔中・高共通の指導のポイント〕
詩に親しませるためには、一つの詩をじっくりと読むこととともに、同じ作者の他の詩を数多く鑑賞させることも効果的である。また、生徒一人一人の見方・感じ方を尊重していくことにより学習に対する意欲が高められる。
○朗読方法の工夫
詩全体を白紙などで隠して一行ずつしか見えないようにし、次にどのような表現が来るか予想させながら朗読させることで、一語一語あるいは一行一行の読みを深めさせるなどの工夫も一つの例として考えられる。
別のとしよりが娘の前に
押し出された。
可哀想に
娘はうつむいて
そして今度は
白紙
○題名からの読み
詩の題名は全体を象徴する場合が多い。この作品の読解に際しては、生徒一人一人の心の中にある夕焼けのイメージを想像させることにより理解を深める。