サクシード中学校国語から高等学校国語へ-024/43page
古典の理解(1) 随筆「徒然草」 言葉を通して昔の人の心に迫る
◇中・高のつながりを考えたときの指導上の課題と課題解決のための指導のポイント◇
語彙、文法、歴史的背景などの違いにより、古典作品を読み味わう楽しさを実感できないということが古典学習をするうえでの中・高の課題である。この課題を解決するために次の点に留意して指導を進めていきたい。
中学校 ■歴史的仮名遣いなどの基本を理解させるとともに、音読や朗読により古典に対する興味・関心を喚起すること。
■有名な古典作品の梗概などを知らせることにより、古典の楽しさを知らせること。
高等学校□古典学習の基礎事項の定着を図り、現代と共通するものの見方、考え方、感じ方を実感させること。
□時代を超えて変わらない人の心の在り方などに触れ、古典作品との出会いを大切にさせること。
神無月のころ、栗栖野といふ所を過ぎて、ある山里にたづね入ることはベりしに、はるかなる苔の細道を踏み分けて、心細く住みなしたるいほりあり。木の葉にうづもるるかけひのしづくならでは、つゆおとなふものなし。閼伽棚に菊・紅葉など折り散らしたる、さすがに住む人のあればなるべし。
かくてもあられけるよ、とあはれに見るほどに、かなたの庭に、大きなる柑子
〔中学校における指導のポイント〕
古典に親しませることに主眼をおくことにより、古典作品への興味・関心を喚起する。また、高等学校において多くの作品を学習することを知らせるとともに、「徒然草」の有名章段の紹介を通して生徒の学習意欲を引き出す。
○音読、朗読の重視
音読指導を重視し、範読・リピート読みの後、各自練習・指名読み・一斉読み・隣り同士の読み合いなど、数多く読ませ、暗唱にまで高める。
○視写による指導
歴史的仮名遣い等の表記に慣れさせるため、古文全文をノートに視写させる。後で現代諸訳が書き加えられるように行を空けて書かせるなど、高等学校での授業にもつなげる配慮をする。
○表現から主題に迫る
「さすがに住むひとのあればなるべし。」について、
〔高等学校における指導のポイント〕
中学校で学習する随筆作品には、「徒然草」と「枕草子」がある(巻末資料の学明日内容の表を参照)。
入門期においては、中学校で学習したこれらの教材をもとに文話文法の基礎知識を定着させたり、口語訳や作品の梗概を適宜参照させることにより理解を深めさせる。また、有名な他の章段を紹介することにより、古典の世界への興味づけを行うことも大切である。
○学習の基本の確立
音読、視写、口語訳、鑑賞という一連の流れを生徒に示し、古典学習のスタイルを早期に確立させる。また、辞書をひくことにより、用例をもとに言葉の意味を確認することが重要である。
○筆者の考え方に迫る
「徒然草」では、筆者の主張は冒頭や最後の部分に述べられている場合が多い。いずれの場合にも具体的な事例を正確に把握し、筆者の主張の根拠を明確にすることが大切であ