サクシード中学校国語から高等学校国語へ-025/43page
の木の、枝もたわわになりたるがまはりをきびしく囲ひたりしこそ、少しことさめて、この木なからましかば、と覚えしか。
(「徒然草」光村図書二年)
【参考事項】
高等学校で扱われる「徒然草」の他の有名章段には次のようなものがある。
序段 (つれづれなるままに…) 七段 (あだし野の露…) 三一段 (雪のおもしろう…) 三二段 (九月二十日のころ…) 四一段 (五月五日、賀茂の…) 五九段 (仁和寺にある法師…) 五九段 (大事を思ひ立たん人は…) 九十二段 (ある人、弓射ることを…) 一〇九段 (高名の木登りと…) 一三七段 (花は盛りに…) 二三六段 (丹波に出雲といふ所…) 二四三段 (八つになりし年…) (高校「国語1」より)
1)「やはり住む人がいるからなのだろう。」という意味であることを確認する。(この部分は教科書の脚注にはない。)
2)どのような人が住んでいるのかを、年齢・性格・人柄などから想像させ発表し合う。
「ことさめて」について、
次の点について考えさせることにより、筆者の考え方・感じ方を理解させる。
1)何を見て「ことさめ」たのか。
2)なぜ「ことさめ」たのか。
3)なぜこの木がなかったらよかったと言っているのか。
4)そこから筆者のどんな考え方がわかるか。
【古典に関わる言語事項】(1)
◆現代でも用いられている言い回しには次のようなものがある。
○「つゆ…(なし)」は「つゆ知らず」などの形で現代でも用いられている。また、副詞の呼応の例としても用いられている。
○「…せざるをえない」などの二重否定的な言い回しについては現代においても注意を促すべき表現の一つである。
る。「はるかなる〜住みなしたる」「木の葉に〜ものなし」「閼伽棚に〜折り散らしたる」などから窺うことができる庵の様子に注目し、「かくてもあられけるよ」に込められた筆者の気持ちを理解させる。
○文章理解と内容理解
「少しことさめて、この木なからましかば、と覚えしか。」という表現に込められた、筆者の落胆の気持ちが生まれてきた理由について考えさ
せる。その際、反実仮想の用例に触れ文法理解の必要性についても理解させる。
古典においても、現代文と同様に文章を人づかみする訓練を徐々に繰り返し、作者が何を見てどう言ったのかを把握し、そこにあらわれた作者の思いを理解させることが大切である。
【古典に関わる言語事項】(2)
◆助詞は、用法を例とともに確認することが大切である。
○助詞「の」の同格の用法「人きなる柑子の木の、枝もたわわになりたるが」で用いられている「の」は、現任でも普段用いられている用例である。
「コーヒーの熱いのを一杯ください。」
〔確認問題〕
中学校 歴史的仮名遣いに注意しながら本文を繰り返し音読し、作者が最も言いたかった点について考えてみよう。
高等学校 作者が心ひかれる生活とはどのようなものか。また、庵を見て最後に失望した理由について考えてグループで話し合ってみよう。