サクシード中学校国語から高等学校国語へ-027/43page

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たり。それを見て、ある人のいはく、

 「かきつばたといふ五文字を句の上に据ゑて、旅の心を詠め。」と言ひければ、詠める。

 唐衣きつつなれにしつましあればはる

 ばる来ぬる旅をしぞ思ふ

と詠めりければ、皆人乾飯の上に涙落としてほとびにけり。

(「伊勢物語」光村図書三年)

(高等学校「国語1」)


にはいられなかった人々の心情を想像させることにより読みを深めたい。また、和歌の技法に触れながらそこに込められた「男」の思いについて考えさせる。

○係り結びの法則の確認

 文末を調べ、「ありけり。」「行きけり。」「いひける。」「食ひけり。」「ほとびにけり。」の中で、形の異なる用例があることに注目させ、係り結びに気付かせる。また、これまでに学習した係り結びの例を挙げさせるとともに、高等学校においてさらに詳しく学習することを知らせる。

 

【古典に関わる言語事項】

◆古今異義語に注目させることにより、古文に親しませる。

 ○「いたりぬ。」の「ぬ」は打消の意味ではなく、完了の意味をもつ助動詞であることを確認する。

 ○「おもしろく」は現代語の「おもしろい」とは異なる意味をもつことを知らせ、その他にも「あはれ」「をかし」などの言葉にも、現代とは異なる意味があることを知らせ、言葉に対する興味をもたせる。


間一語でも辞書を通して、言葉を確認し、辞書に親しませることが大切である。

 ○修辞技法の理解を通して和歌に込められた思いを読みとる

 和歌の修辞技法については、一方的に教え込むより、むしろ生徒に発見させることに重きをおくことも大切である。(序詞・枕詞・縁語・掛詞・折り句など)

 また、和歌を通して、都に残してきたひとに対する「男」の恋しさを読み取らせることにより、作品の主題に迫るとともに、「伊勢物語」の他の章段についても紹介して、古典の世界を広げる。

 

【古典に関わる関連学習】

◆次のような学習も効果的である。

 ○作品中の地名(八橋など)の起源について、グループで調べる。

 ○歴史についての学習との関連を図り、他教科の教員との共同の授業や研究を工夫する。

 ○旅の文学という観点から、他の古典作品について班別に調査し、発表させる。また、この作品が、「源氏物語・須磨の巻」における貴種流離譚の一つのモデルになっていることについても触れ、興味・関心を喚起する。


〔確認問題〕

中学校   当時の旅の様子について、図書館などを積極的に活用してグループで調べて発表してみよう。

高等学校 和歌を聞いた人々が涙を落としたのはなぜか。地の文と和歌との関係を踏まえて、その理由を書いてみよう。


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