サクシード2中学校国語から高等学校国語へ-020/81page
(5)対話をくり返す
一考える契機としての川一
●見つめること・感じること
考えるというと、なにか特別のことと身構えてしまいがちです。しかし、実は考えるきっかけは私たちの身の回りにはたくさんあるのです。考えることは、実は本当の自分と出会うことにつながります。通勤や通学途中の川の流れ、木々の枝振り、普段は気づかないものを見つめていくことによって、自分の考えや思いを深めていくことができるのです。流れるものやくり返し動くもの、あるいはじっとしているもの、そうしたものを見つめているうちに心に湧きあがってくるものは、自分自身の内面そのものであるともいえます。
見つめる対象は、空を行く雲であったり、くり返し寄せる波であるかも知れません。星、蝋燭の炎、川の水、そして、空から降りしきる雪あるいは、風に揺れる樹木。大切なことは、これらの自然や事象を見つめ、じっくりと感じる時間を大切にすることです。また、それら考えるきっかけを逃さないことです。
現在の私たちの生活にはゆとりがなくなりつつあります。ゆったりと時に身をまかせて考えていることが思うようにできにくい時代であるともいえます。そうであるがゆえにこそ、自分の時をとりもどし、豊かに生きていくためにも、身の回りのものと対話することが必要なのです。例えば、次のような作品があります。
川の流れを見るのが好きだ。たとえどんな小さな川であろうと、川のうえにあるのは、いつだつて空だ。川の流れをじっと見つめていると、わたしは川の流れがっくる川面を見つめているのだが、わたしが見つめているのは、同時に川面がうつしている空であるということに気づく。ふしぎだ。川は川であって、じつは川面にうつる空であるということ。すなわち川は、みずからのうちに、みずからの空をもっているということ。
川の流れをずっと見ていて、いつも覚えるのはそのふしぎな感覚だ。
(「記憶の作り方」長田弘岩波書店)
目的をもって考えるとともに、ゆとりをもって思いを巡らせることが大切なのです。こうした身の回りのものとの対話のくり返しの中で、自分自身との対話も生まれてくるのです。
流れるれる時間
●流れるものとの対話
例えば、「論語」の授業において、川をテーマにした章句とその背景を調べさせることにより、いかに川や水が当時の人にとって意味を持っていたかを考えさせることもできます。
授業の窓
中学校の教科書から
「故郷」の冒頭には、「もう真冬の候であった。……あちこちに横たわっていた。」という具合に、故郷の眺めが、季節や天候と合わせて描写されている。
教室の窓から見える風景を、次の各項に留意しながら、文章によって描写してみよう。
(1)季節や時刻がよくわかるように描写する。
(2)光や色彩の要素を強調する。
(3)動くものの様子、動かないものの様子を対比的に表現してみる。
(「国語3」光村図書P.131)
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