サクシード2中学校国語から高等学校国語へ-044/81page

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15)テーマをもって考える
  一ライフワークをもつこと一

●ライフ・ワークのすすめ
 自分で興味を持ったことについて、テーマをもって考えることは、思考力や表現力をつけていく上でとても重要なことです。自分なりのミニ論文を書く機会を持つことによって、学ぶ意欲を引き出すことも大切です。
 例えば、小説作品を読むときにも、作品をくり返して読むことや他の作品を読むことにより、著者が生涯を通じて考えていた主題や内容を統一して考えることができるのです。
 前田愛氏は、都市空間の持つ意味を考察することで塵外の「舞姫」を精緻に分析しています。また、蓮實重彦氏は、横たわる姿勢が小説においてくり返されていることに着目し、漱石の作品を分析しています。このように、自分なりのテーマを持つことが、深い見方や考え方の基礎となり、ライフ・ワークと呼ばれる大きな仕事にもつながっていくのです。そのときには理解できなくても、成長の過程で疑問が解け、理解が深まる場合も多いといえます。授業の中で確実に理解することとともに、疑問を疑問として、テーマをもって考え続けることを大切にしたいものです。
 文学的文章等をもとにして、具体的なテーマ(研究テーマ)を設定する場合には、次のような点に注目することも大切です。また、アンケートや各種調査などから考えることも大切です。

「それから」(高等学校「現代文」)について考える
■くり返されているものに着目する
  ●主人公の動作………………… 鏡で自分を見るという動作…自己愛的な傾向
    百合の花を嗅ぐという動作…植物との擬似的な一体感
    地震の描写…大地がゆらぐ感覚不安感の増大
  ●描写や視点について………… 風景描写 心理描写 人物の視点 叙述の視点
  ●用語の使い方について……… 語法 文法 特殊な言葉 専門用語
■全体の構造に関するものに着目する
  ●関係性について……………… 家族関係…家長としての父と主人公との関連
    社会関係…当時の社会における結婚観
    夫婦関係…当時における社会通念について
  ●変化について………………… 成長 心理の変化 減少 増加
  ●影響について………………… 言葉による心理への影響 マスコミによる影響等

ミニ論文のすすめ
●生涯のテーマを
 中学校や高等学校では、単位認定のための卒業論文はありませんが、自分だけのテーマをもって研究させる「ミニ論文」作成なども生徒の思考力・表現力を向上させる試みといえます。
 自分の選んだテーマで課題となっているものを、参考文献を探しながら調べていくことにより深い楽しみが生まれます。
 自分だけのテーマを生涯追い続けることは、人生を豊かにする一つの方法といえるでしょう。

授業の窓
中学校の教科書から
●わたしの宮沢賢治
 1.感想を話し合う。
 2.読み深めるための課題をもつ。
 ジョバンニの心が、自然の中で自由にのびのびと想像力を働かせているように感じた。そこで、賢治について調べ、「賢治と自然」というテーマでレポートをまとめることにした。
(「国語」光村図書P.284)

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