教育福島0001号(1975年(S50)04月)-035page
わが村の生がい教育
心豊かな村づくりをめざして
西白河郡西郷村教育委員会
白河市郊外,戊辰戦役の碑を見学する寿学級生
明治二十二年町村制が施行されて以来八十年、一度の合併も分村もなく存続した西郷村は、いま、激動の渦の中に巻き込まれている。
◎ 日光国立公園、新甲子温泉郷、甲子高原国設スキー場、三つのゴルフ場等を持つ村に中央の観光資本が目をつけ進出を図って来た。
◎ 東北縦貫道白河I・C及び東北新幹線新白河駅の村内決定。中小工場の進出。白河市のベッドタウン化傾向。
◎ 県の福祉施設「太陽の国」、国の社会教育施設「少年自然の家」建設。
酪農・米作を中心とした、面積百九十五平方キロ、人口一万一千の我が村は、純農村から都市近郊農村へと急速に変ぼうしつつあり、社会教育に求められる課題は実に大きい。それを解決するために
1)豊かな市民性を一人一人が身につけること。
2)社会教育施設の拡充。
3)社会連帯の意識、人間尊重の意識団体・公民意識の向上等を目標に掲げ社会教育を進めて来た。
青少年・成人・高齢者学級、社会体育等各領域で多様にわたって事業を行っているが、その中で特に高齢者学級の例をあげて説明したい。
高齢者学級(ことぶき学級)
(一)ねらい
1)広い村内の各地域住民間の親ぼく
2)生産情報、趣味、娯楽等の情報交換
3)老人の社会的役割の自覚と生きがいを求める学習活動への発展
4)健康の維持・管理と老人クラブ活動への積極的参加
(二)学級への参加方法
東西二十キロ、南北十五キロに及ぶ広大な地域に住む老人に対し、有線放送による参加の呼びかけ、文書の配布十一に分かれた老人クラブヘの参加とりまとめ依頼と募集活動を展開する。
学級開設日には教育委員会所属の三台のスクールバスによる送迎が行われる。毎回十時の開講に間に合うよう、各部落まで配車されるのである。そのために年間の参加率は七十四パーセントをくだらない。
(三)学習方法と内容
これまで実施した学習内容の中で特に好評なものは、1)盆栽・植木の手入れ、高山植物の栽培2)村内や栃木県内の移動学習(修学旅行と呼ぶ)及び史跡めぐり3)映画による老人問題学習等であった。
学習の方法としては「話を聞く」受け身の学習から脱皮して、自らの手で行う学習に移りつつある。そのために学級の運営委員会を設け、学習者の自主性を尊重している。
また学習課程にもくふうを加え、趣味の学習の場合、一日の中で各人の興味、関心の別により学級を細分して実施したり、クラブ活動を更に発展させ地域活動と結びつけ、学習の継続化を図ること、更にボランティアとして社会活動に参加してもらっている。
(四)他行政機関との関連
村の経済課所管の植木振興会(販売も実施)と関係を保ち、植木、盆栽の栽培を単なる趣味にとどめることなく実利と結びつけて行けば、それが生きがいにもなり働くチャンスにもつながっている。
また住民課で実施している健康相談を利用したり、村内十一に分けて編成されている老人クラブの活動と提携して学級運営を進めていることは前にも述べた。老人クラブで熱望している老人福祉センターの設立への働きかけや社会奉仕活動のバックボーンになる等ことぶき学級への期待はますます大きいものと言える。
最後に、これら社会教育の成果が、健康で明るい平和な村づくりにしっかりと根を下ろすことを願っている。