教育福島0003号(1975年(S50)07月)-017page
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とも少なくない。ただし、観察できるのは生徒の現在の行動−それは生徒の生活の一部分にすぎない−であって、その行動を引き起こしている原因や背景ではないということを忘れないようにしたい。また、自分の観察だけで足れりとせず、教科担当、クラブ活動担当、部活動の顧問など他の教師の観察結果も受け入れることが大切である。
(二)「調査」家庭環境調査、生育歴調査、悩みの調査、交友関係調査、趣味・興味の調査、被害調査など種々の調査を実施している学校が多いが、それらを教師がいつでも利用できるように整備し、その調査結果を生徒指導の上で、実際に活用していくことが必要である。
(三)「検査」観察による主観的判断はややもすると妥当性を欠く場合がある。この欠点を補い、科学的・客観的に生徒の行動のさまざまな側面を測定する方法として「検査」の活用が考えられる。その主なものは、知能検査、性格検査、適応性診断検査、学力検査などである。ところで検査に関して留意すべき点をあげれば、1)検査の結果に問題があるからといって、すぐ問題生徒扱いすることは避けなければならない。2)前年度の検査結果や他の種類の検査の結果と比較して変化の有無を調べる。3)検査を過信して、生徒を類型に分類し、公式にあてはめてしまうのは危険である。4)検査自体の持つ限界を考え、検査だけで評価・判断を下さず、他の各種の生徒理解のための資料や日常の観察と合わせ、検査結果を総合的に利用するなどが考えられる。
(四)「情報の収集」ホームルームやクラブの生徒、部活動の仲間、生徒の家族、青少年保護育成関係の諸機関(少年警察、少年補導センタ−、保護委員会など)、出身中学校の教師や地域の人々から得られる情報が必要な場合も少なくない。
(五)「面接」調査面接(個別的に面接して、前もって用意した必要事項について口頭で質問し、言葉で回答させ、相手の意見、知識、態度などを知る方法)、相談面接(こちらから聞き出すという態度でなく、十分時間をかけ、受容的態度で接し、相手の話し出すのを待つやり方)、集団面接(場合によっては、一対一よりも五〜六人ぐらいの集団の中のほうが話しやすいこともある。しかし、とかく他人の意見に左右されがちである)などを計画的に実施する。実施に当たっては、まず面接者と被面接者との間の信頼関係を作る努力がなされなければならない。
(六)「父母との接触」学級懇談会、父母との個別面接などを行う中で、教師と父母が打ち解けた態度で、生徒の問題について話し合ったり生徒の家庭環境をよりょく理解するために家庭訪問をしたり、また時には地域懇談会を催したりすることによって、日ごろ、父母との接触の機会を多くし、相互の信頼感を高め合い、意思の疎通を図っておくことが必要である。
また、問題行動を起こす前には、通常、なんらかの徴候があると言われているが、非行性の初期の徴候の例として、次の諸点に留意する必要がある。
(一) 無断欠席、遅刻、早退が多くなる。
(二) 学習意欲及び学習成績が著しく低下する。
(三) 容姿や服装に異常な関心を示すようになる。
(四) 態度や言葉づかいが変わる。
(五) 教師や親にむやみに反抗するようになる。
(六) 交友関係に変化が見られるようになる。
(七) うわのそらでいたり、気分がふさいでいることが多くなる。
(八) 教師や親を避ける傾向が出てくる。
(九) 手紙や電話に対して敏感になる。
(十) ささいなことにも立腹するようになる。
このような徴候が現われている生徒のすべてに、大きな問題行動が起こるとは言えないにしても、これらの徴候は、教師がその生徒を更によく理解し早期に指導の手を差し伸べなければならない必要性を示していると考えてよかろう。問題行動の早期発見は、とりもなおさず問題行動の未然防止につながる。そして問題行動の未然防止は、けっきょくにおいて、小手先でなく、惜しみない愛情に基づく生徒理解を着実に進めることによって、初めて可能になるのである。
四、問題生徒の指導
これまで見てきたように、生徒の持つ問題は多種多様である。ある原因に基づく問題行動もひととおりの現れ方でなく、いく通りかの現れ方を示
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整然と下校する福島西女子高校生
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