教育福島0003号(1975年(S50)07月)-018page
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すことがよくある。逆に、ある問題行動に関する原因は単一でなく、複数の要因が錯そうしているのが普通である。したがって、問題生徒の指導も、その問題の原因や種類及び程度に応じて進められなければならない。概して、問題行動や非行傾向を持つ生徒は、能力や環境において恵まれない条件を持っている場合が多いので、かれらは暖かな理解と愛情に飢えている生徒であるという認識に立って指導に当たることが必要である。しかし、このことは、問題生徒を特別扱いして、かれらの欲求をなんでも満たしてやったり、かれらのごきげんをとったり、かれらに合わせていくといったことではない。むしろ、先入観や道徳的判断にとらわれずに、かれらをあるがままに直視し、受け入れ、理解しようとする。いわゆる「共感的理解」こそ、かれらの最も必要とするものである。また、かれらの多くは権威に敵意を持ち、拒否的態度や挑戦的態度を示しやすいので、指導に当たって、教師はそれに巻き込まれて感情的になることを抑えて、常に受容的・客観的態度を持って臨むことが大切である。要するに、従来の管理・訓育的な指導(外面的・命令的な指導)と平行して、相談的な指導(内面的・受容的な指導)を実施しながら、生徒自身が現実を直視し、積極的に問題解決に取り組み、自分の目標を自分で設定し追求するよう援助を進めていくことが必要である。
五、手段としての懲戒とその実態
次に、非行を起こしてしまった生徒に対する措置について考えてみたい。
問題行動のきょう正・治療の手段として、また、集団の秩序や規律を維持するための管理的な手段として、罰や懲戒は必要性を認められ、一般に広く行われている。このことは、罰則や強制などの外部からの力によって、生徒の行動を規制し、自己をみつめる機会を与え、更に社会的責任を自覚させ、そうすることによって、生徒の生活行動や人格を望ましい方向に向けていくことが可能であるという前提に基づいているのである。
さて、現に、どのような指導措置がとられているかを知るため、前記の四十九年度の事故報告書によって検討してみると、次に述べるようないくつかの特徴・傾向・問題点をつかみ、実態の一部をのぞくことができよう。
(一) 懲戒処分による退学は極めてまれであり、ほとんど依願退学の形をとっている。このことは当該生徒の将来と、更生の可能性を考えた場合十分うなずけるものである。
(二) 依願退学者の中で、家出生徒の占める率は二十七・一%で最も多く、窃盗(二十三・四%)、不純異性交遊一十九・七%)、暴行(十七・三%)の順に続いている。
(三) 家出生徒について見れば、六十四・七%が、学業半ばにして退学している。特に異性関係に原因のある女子生徒の家出の場合は、教師の説得にもかかわらず、その大部分が学業継続を断念している。
(四) 不純異性交遊については、その四十八・五%、窃盗については、その三十三%、暴行についてはその十五・六%の退学者が出ている。
(五) 家出、不純異性交遊以外の非行生徒に対しては、謹慎処分で臨む例が最も多い。
(六) 謹慎の期間については、七日以内が最も多く、四十一・八%。次いで八日から十四日までで、二十一・五%となっている。
(七) 学年別に見ると、退学者は二年生が最も多く、一年生、三年生の順に続き、謹慎の場合は、三学年ともほぼ同数である。
六、指導措置についての留意点
学校教育法施行規則第十三条に「懲戒のうち、退学、停学及び訓告の処分は、校長がこれを行う」と定めてあり更に福島県立高等学校学則第二十九条には「校長は、教育上必要があると認めるときは、生徒に対し、謹慎、停学又は退学を命ずることができる」とある。そして、実際に学校で行われている懲戒としては、説諭、訓戒、訓告、謹慎、停学、退学などがあげられる。説諭や訓戒は法令用語の訓告(懲戒処分としては最も軽いもの)と同義に用いられる場合があるが、生徒が一時的な軽微な問題行動を起こしたようなときに、校長や教員が、しかったり、いさめたり、あるいは反省を促したりする事実行為としての懲戒と考えるのが妥当であろう。謹慎は、名称が違っても、施行規則にある停学に当たるものとされている。 (昭和三十二年十二月二十一日付文初第六百十五事務次官通達)つまり、実質的内容は停学と異ならないが、語感の上からは、停学より軽い指導措置であると受け止められ、また、慣行的にも、より軽い非行に対して謹慎措置がとられている。停学は、生徒を一時的に授業を受けたり、学校施設を利用することを禁止するものである。退学は、生徒としての身分を失わせるものであって、極めてやむをえない場合、例外的措置としてのみ行いうるものである。よって、処分対象者は、1)性行不良で、改善の見込みがないと認められる者、2)学力劣等で、成業の見込みがないと認められる者、3)正当の理由がなくて出席常でない者、4)学校の秩序を乱し、その他学生又は生徒としての本分に反した者、(施行規則第十三条第三項)に限られている。
次に、懲戒措置を決定するまでの過程において配慮すべき事項を列挙してみる。
(一) 処分事由となる事実を、客観的
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