教育福島0004号(1975年(S50)08月)-013page

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(四) 授業展開の例

 

 

シート学習の授業

シート学習の授業

 

三、指導結果

連立方程式の単元の指導を振り返ってみると、一元一次方程式を解けない生徒や、正負の数の四則計算もすらすらできないといった前提条件の不ぞろいの状態の下でいっせい授業を進めることには、かなり無理があった。その解決策としてプリント学習にも頼ってきた。しかし、その方法においても生徒個々に解き方を詳しく説明することができないという悩みがあった。更に下位生徒にのみ重点指導をかけすぎていると、上位生徒の能力を伸ばすことができないという悩みもあった。

ここに、シート式磁気録音機を授業に導入することによって、これらの悩みが解決され、生徒たちの学習意欲も高めることができた。しかも、通過率も十パーセント近く上回った。したがって、この単元でシート式磁気録音機を使うのは、効果があったと評価することができる。

その反面、先進校にならって平方根の単元をシート学習を中心に進めた結果時間が多くかかった割には、通過率が悪かったといった例もあった。

数学の新しい概念を指導する面においては、効果がないのか、又はもっと細かいステップのプログラムを作成しなくてはならないのかなど、反省、検証は今後の問題である。

また、一単位時間の指導過程の中で使用するときには、導入面より学習の強化や治療を目的にして使用したほうが効果があがることも明らかになった。

終わりに、今までの実践を通し、効果のあがった単元(内容)を列記し、まとめとしたい。

 

一年 ○正負の数(加法、減法、乗法、除法の計算)〇文字と式(文字式とその計算)〇方程式と不等式(方程式の解法)

二年 ○式の計算(多項式の計算)○不等式 ○連立方程式

三年 ○多項式 〇二次方程式

(教諭 鈴木隆雄)

 

□考察□

 

児童・生徒個々の能力に応じた学習指導でありたいということは、教師ならだれでもが願っているところである。白岩中学校においても、このような願いからシート式磁気録音機を取り入れたことは教育的に大きな意義がある。

そして、多方面からの研究による成果は各学校に多くの示唆を与えてくれるものと思う。特に、シート式磁気録音機を学習指導に取り入れて一番容易でないシート作り、すなわち、ソフト研究だけでなく、四分間の録音、マスターシートからの転音という大変な作業を写真のようなセットで上手に解決していることは学ぶべき点である。

シート学習の位置づけを三つの場面三つの型で実践しているのは、白岩中学校の研究の特色でもあるが、A型、B型で、ドリルの前にシート学習を位置づけたらどうなるのか、また、単元全体で考えたときに、シート学習を位置づけない時間があってもよいのではなかろうか。今後の研究課題である。

最後に、新しくシート式磁気録音機を学習指導に取り入れる学校では、この面の文献や研究報告書がたくさん出ているので、それらを参考にしたり、白岩中学校のような先進校の助言を受けるよう心がけ、シート式磁気録音機の導入の初めから効果ある学習指導を展開するようにしたいものである。

 

 

 


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