教育福島0007号(1975年(S50)11月)-012page
雨にもかかわらず、平田村からは老人学級の団体も来て、盛況であった。しかし、歌舞伎が我が国の伝統的舞台芸術ということで、観客層は年輩の人が多く、若い人の姿は数えるほどしか見受けられず、寂しい感じであった。歌舞伎、文楽、邦楽、邦舞などの古典芸能の良さをいかにして若い年齢層に理解させ、振興するかが、今後の課題である。
六、新劇公演
○期日
十一月九日(日) 二本松会場
十一月十日(月) 若松会場
○会場
二本松市文化センター
会津若松市民会館
○入場者数
約千五十人 (二本松会場)
約千人 (若松会場)
○演目
「スカパンの悪だくみ」
モリエール原作
○演出 芥川 比呂志
○公演 劇団 雲
○配役
仲谷 昇
神山 繁
松本 留美
沢井 孝子
橋爪 功
ほか
○感想
「スカパンの悪だくみ」は、我が国の新劇公演が悲劇を多く取り上げている中では、珍しい芸術的な喜劇である。昨年の四月に、現代演劇協会が「三百人劇場」という劇場を作り、その開場記念公演として上演されて、非常に好評を得たものであった。地方の新劇ファンにとっては、容易に喜劇にお目にかかれない中で中央で折紙つきの良心作を見れるということで、観客動員が期待された。しかし、いざチケットの販売を開始してみると、なかなか思うように伸びず、二本松、会津若松市の関係者は、心を痛めた。
二本松市で行政が自らこのような事業に取組むのは初めてでもあり、新劇ファンが果たしてどれくらいいるのかさえ皆目見当がつかない状態であった。しかし、教育委員会の職員の懸命の努力によって千名を突破したのであった。公演後、キャストの神山繁と仲谷昇は、二本松市の人口が四万人に満たないにもかかわらずこんなにたくさんのお客が入ったのは信じられない、と言っていた。ともすると主催者側が、公演の喜劇と逆に、悲劇になるところであったが市民の熱心さに支えられ安心したのであった。
一方、会津若松市会場も、公演前日に新劇の有料事業があったばかりで、数日後にも新劇公演が予定されており、観客の奪い合いとなって苦戦を強いられたのであった。しかし悪条件の中で、約千名の観客を動員できたが、これは、行政組織と文化団体の組織が手を組んで努力したことと、三年前から県の「芸術文化(演劇)のふるさと」に指定され、三年目にしてその事業の成果が着実に定着して、演劇ファンの層が厚くなった結果であると考えられる。
「スカパンの悪だくみ」橋爪功(左)と仲谷昇(右)
七、交響楽公演
○期日 十一月八日(土)一四・三〇〜
○会場 白河市民会館
○演奏・指揮 大町陽一郎
ピアノ独奏 松浦 豊明
オーケストラ演奏
東京フィルハーモニー交響楽団
○演奏曲目
(1) ルスランとリュドミラ序曲
グリンカ作曲
(2) ピアノ協奏曲第一番
チャイコフスキー作曲
(3) 交響組曲シェエラザード
リムスキーコルサコフ作曲
○入場者数 約千百五十名
○感想
東京フィルハーモニー交響楽団は我が国の数あるオーケストラの中で歴史的にも、高い芸術性からも、N響と双壁をなす演奏団体である。この本格的な東フィルが白河市で演奏会を公演するのは、今回が初めてであった。白河市で、かつてオーケストラの演奏会が公演されたのは、京都交響楽団、読売日本交響楽団に続いて今度で三回目であった。
東京フィルハーモニー交響楽団演奏会