教育福島0007号(1975年(S50)11月)-018page

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施した。調査方法は県内約二千名の会員に調査用紙を配布し、伝承者の住所氏名と歌詞などを記入してもらった。その結果六十市町村にわたって千四百四十五枚を回収することができた。しかし、問題はその録音採集の費用のねん出であった。ところが願いがかなって、翌四十七年九月、県の補正予算で百万円の調査費が予算化され、本連盟が委託を受けた。

そのため同年十月下旬に、本連盟内に「民俗音楽調査委員会」を設置した。顧問には福島県文化財専門委員の本田安次氏他四氏をお願いし、会長には本連盟の高野広治氏を、委員には県内各地区から一、二名を当て、事務局を県立安達高校に置いた。事業は本連盟会員不在の市町村には該当の市町村教育委員会の手をわずらわして所在の補足調査を実施し、他方、先の本連盟の調査票も含めた中から、類例の少ないもの、又は収録に緊急を要するものなど二百曲を収録し、その内百曲を採譜した。この中には、過去の文献に全く見られなかったものも数曲あり、予想を越えた成果を上げることができた。

この調査は県内はもとより、県外からも大きな反響を呼び、更に民俗芸能に伴う歌や鷹子も調査収録して欲しいとの声が日ごとに盛り上がった。そのため、県内の民俗芸能は廃絶したり中断しているものも含めると、約千か所に伝えられているので、その一割を収録すれば県内の民俗芸能は概観できるという判断から、百か所の調査計画を立てその予算化をも県当局に陳情した。多くのかたがたの力添えもあって、昭和四十九年の県当初予算に、文化庁の補助を含めて五十万円の調査費が認められ、再び本連盟が委託を受け次の四十種を収録して採譜した。

(1)田手宇賀神社の太々神楽(田島町)

(2)赤井の大和舞(いわき市)

(3)上三宮の太々神楽(喜多方市)

(4)鹿島神社の太々神楽(白河市)

(5)柳橋の太々神楽(郡山市)

(6)磐梯神社の巫女舞(磐梯町)

(7)桙衝神社の太鼓獅子(長沼町)

(8)南柚木の神楽(鹿島町)

(9)伊佐須美神社の催馬楽(会津高田町)

(10)佐布川の早乙女踊り(会津高田町)

(11)鈴石の田植踊り(二本松市)

(12)大久保の田植踊り(飯舘村)

(13)蕨平の田植踊り(飯舘村)

(14)深谷の田植踊り(飯舘村)

(15)上栃窪の田植踊り(鹿島町)

(16)南津島の田植踊り(浪江町)

(17)請戸の田植踊り(浪江町)

(18)山口の早乙女踊り(南郷村)

(19)宮床の早乙女踊り(南郷村)

(20)鴉巣の早乙女踊り(南郷村)

(21)界の早乙女踊り(南郷村)

(22)小林の早乙女踊り(只見町)

(23)本揃の田植踊り(大玉村)

(24)古寺山自奉楽(須賀川市)

(25)御宝殿熊野神社の田楽(いわき市)

(26)長折の三匹獅子(岩代町)

(27)川内の獅子舞(川内村)

(28)茂原の獅子舞(岩代町)

(29)熊川の獅子舞(大熊町)

(30)滝尻の棒ささら(いわき市)

(31)高野の獅子舞(いわき市)

(32)小野大倉の獅子(小野町)

(33)苅宿の鹿舞(浪江町)

(34)柳橋の獅子舞(郡山市)

(35)大波の獅子舞(福島市)

(36)川前の愛宕獅子(梁川市)

(37)須釜の念仏踊り(玉川村)

(38)鈴石の七福神(二本松市)

(39)二本松の祭り鷹子(二本松市)

(40)猪苗代の祭り鷹子(猪苗代町)

本年も同様に五十万円が子算化され現在次の三十種の収録を進めている。

(1)黒沼神社の十二神楽(福島市)

(2)鈴石の太々神楽(二本松市)

(3)白岩の太々神楽(白沢村)

(4)神原田神社の十二神楽(大玉村)

(5)南柚木の十二神楽(鹿島町)

(6)福田の十二神楽(新地町)

(7)江垂の神楽(鹿島町)

(8)南柚木の大蛇舞(鹿島町)

(9)深野の大蛇舞(原町市)

(10)梁取の神楽(只見町)

(11)多田野の鍬柄舞(郡山市)

(12)母畑の平鍬踊り(石川町)

(13)雫の田植踊り(原町市)

(14)伊丹沢の田植踊り(飯舘村)

(15)松塚の田植踊り(飯舘村)

(16)山木屋の獅子舞(川俣町)

(17)下大石の獅子舞(霊山町)

(18)上手渡の牡丹獅子舞(月館町)

(19)新田内の十一匹獅子舞(小野町)

(20)今泉の獅子舞(船引町)

(21)赤枝の彼岸獅子舞(磐梯町)

(22)西久保の獅子舞(猪苗代町)

(23)高野の獅子舞(田島町)

(24)高田島の獅子舞(川内村)

(25)西郷の獅子舞(川内村)

(26)霊山神社の濫腸武楽(霊山町)

(27)関辺の天道念仏踊り(白河市)

(28)二本松の祭り難子(二本松)

(29)大内の綾踊り(鹿島町)

(30)江垂の宝財踊り(鹿島町)

来年度は残り三十種の調査を予定している。

音楽は「歌」に始まり、歌はその言葉の持つアクセントやイントネーションなどの自然の発露であることを考えるとき、日本の音楽教育は、わらべ歌で出発して民謡で花咲き、器楽曲などを当然民俗音楽を素材にしてこそ、世界に誇れる新しい日本の伝統音楽を生み出せるように思う。

民俗音楽のような無形のものは、一旦廃絶してしまったら、もう永久に復興はできない。そして、今日ほど急激な変ぼうを遂げる社会情勢にあっては失う速度もまた加速度的である。

これらの調査結果がすべて公刊されたなら、福島県にとどまらず、日本の今後の音楽教育と音楽文化の発展に、計り知れない貢献をするものと信じている。県民の皆様と関係方面の更に一層の御協力と御援助を願ってやまない。

(福島県合唱連盟民俗音楽調査委員会事務局)

 

 

 


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