教育福島0007号(1975年(S50)11月)-035page

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わが町の生がい教育

 

町民サークルで生きがいを

田村郡常葉町教育委員会

 

全山石灰石からできている大滝根山を源とする大滝根川が南北に縦断し、国道二八八号線が東西に貫通している田村郡の東部に位置する常葉町はその名が示すとおり、四方を阿武隈の山地に囲まれた緑の美しい町である。しかも町内の各所から、石器や土器が発掘されているように、古代からの歴史が続いている静かな町でもある。

戸数千六百、人口七千六百余りのこの町でも、最近における農家の経営形態の変化に伴い、年々中高年齢者が増えつつある。厚生省が発表した日本人の平均寿命は、男女とも七十歳を超しており、「人生わずか五十年」というのは遠い昔の話になってしまったことになる。

このような状況の中にあって、中高年齢者が、社会に取り残されず、生がいを見いだすためには、

(一) 核家族化する家庭の内で、中高年齢の人たちに、いかに精神的安定を確保させるか

(二) 積極的に社会人としての生きがいを見いだすために、社会奉仕活動をいかに展開させるか

(三) 生活のための労働が少なくなったことによる余暇の時間を、いかに生気あふれる過ごし方をさせるか等が、施策上の重要な課題であると考えられる。

これらの人々は、それまでの生活のために、過重な労働に全力を注いできた結果、老後の生活に潤いをもたらすであろう趣味等は、ほとんど持っていない現況である。そこで、

○グループ活動を通して、趣味や生活に関する技術を楽しみながら取得させる

○公民館に集まることによって、住民相互のコミュニケーションを盛んにする

○知性と教養を高め、住民としての

自治意識を高める

以上の趣旨により、今年度から町教育委員会が中心になって、成人者を対象として「町民サークル」を次の要領で開設した。

(一) 開設期間八月九月の二か月間で毎週一回月躍日から金躍日の午後七時三十分から二時間、合計八回開講する。

(二) 対象者町内在住者並びに町内企業等に勤務する男女で、在学中のものは除く。

(三) 受講料 材料を必要とするものはその都度実費を必要とし、講師謝礼は、教育委員会で負担する。各サークルの事務消耗品にも支出するため一種目について三百円の申し込み金を納める

(四) 種目、内容、人員(申し込み人員)等

ア 盆栽入門 緑を愛する人のために盆栽の手入れについて基礎から学び、鑑賞を通じて生活に豊かさを〈二十人 月曜日〉

イ 民謡入門 地方に残る生活の歌日本の民謡を家族そろって歌い、生活に潤いを〈七十五人 火曜日〉

ウ 着物の着付け 一人で着物が着られるまでと作法を〈五十五人水曜日〉

エ 詩吟入門 詩吟の基礎を学び生活に入れてみよう〈十七人木曜日〉

オ 版画入門 木版画の実技を通して、完成までの喜びと鑑賞の方法を 〈八人 木曜日〉

カ 書道余暇の善用と実生活に必要とされるものを〈二十一人金曜日〉

キ 紙人形 伝統の和紙を使って日本の美を人形に表そう〈十六人金曜日〉

七種目で二百二十二人の成人者が、毎週集まって楽しく歌ったり、作ったりして修了した。その後このサークルは、愛好会として更に活動を続けているが、やがて中高年齢層に達した場合においても、その生活が、楽しく、生きがいのあるものになれば、と期待している。

 

版画サークルの活動

版画サークルの活動

 

 

 


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