教育福島0010号(1976年(S51)04月)-037page
指導資料
−高等学校−
地域ぐるみの生徒指導の推進
−保護委員会活動のあり方−
一、はじめに
最近における県内高校生の非行件数は、ここ二、三年漸増の傾向を示しており、全国的にも戦後三回目のピークを形成しつつあるといわれている。県警察本部の統計によれば、昭和五十年一年間に、高校生総数の約一四%に当たる一万三千名の生徒が、なんらかのかたちで警察の補導を受けているという結果が表われている。
もちろん、これらの補導を受けた高校生が、すべて「非行少年」というのではなく、非行といっても「重い非行」と「軽い非行」とがあるわけで、「軽い非行」といわれるものには、一過性のものが多く、さほど深刻に受けとめる必要がないという意見もある。しかし、非行を「青少年の発達の問題」とのかかわりで考えるときに、今回の青少年非行の漸増傾向を、あまり軽く見過ごすことはできない。
それは、以前のピークの時期に比べて、高校生を取り巻く社会環境と、現在の高校生がかかえている主体的条件が大きく変化して、おり、最近の青少年非行の増加の傾向は、単なる流行や一時的な風潮ではなく、深い社会的な問題としての性格をもっていると思われるからである。したがって、高校生の問題行動の傾向やその心理を病理的な現象としてとらえるだけでなく、広く社会的な視野からこれを理解し、生徒指導の現実的な課題にこたえていくことがたいせつであると考えるのである。このためには、地域社会における在学青少年の育成援助という視点から、家庭・学校・社会の三者が、それぞれの役割分担を明確にして、相互に補完し合いながら「地域活動」を推進していくことが必要となってくるのである。
二、保護委員会活動のあり方
本年二月六日に県保護委員会連絡協議会が結成された。そこでこれを機会に、地域ぐるみの生徒指導を推進するという立場から、保護委員会の「地域活動」のあり方について考えてみた。
(一)保護委員会活動の位置づけ
そもそも、保護委員会活動は、学校や単位PTAのいわば"点"の生徒指導に対して、地域におけるすべての学校のあらゆる生徒を対象とした"面"の組織活動である。この意味からも、保護委員会活動は学校教育と社会教育の境界線上にある代表的な教育活動である。したがって、これを一方の領域におし込むのではなく、境界線上にあるこの位置づけを再確認して、今後の保護委員会活動の目的や役割を構想していく必要があると思われる。
(二)活動内容の充実
昭和三十四年に発足した保護委員会の諸活動をふりかえると、初期の被害防止の消極的な保護活動から、やがて街頭補導に積極的に進出したが、昭和四十年ごろからの都市化現象の進行に伴い、一部の地域においては補導活動の停滞をきたしたところもみられた。今後の活動は、これらの経過と反省を生かして、生がい教育の推進という立場を踏まえ、
第一は保護委員相互の交流を深め、それぞれの家庭の教育的機能を高める研修活動を充実すること。
第二は善意のボランティア活動を基盤とした健全育成機関として、予防的活動に重点をおくこと。この二つが保護委員会の中心的な活動と考えられる。
国環境浄化運動の推進
さらに、県連協の組織化を機会に、保護委員会が、学校一生徒)と地域社会との関係を、環境問題という新しい観点から検討しなおしてみてはどうだろうか。近年、俗悪な出版物・映画・広告物等には、興味本位のものが目立ち、また、酒・たばこ等の自動販売機の普及も、青少年の健全育成を著しく阻害している。青少年の豊かな情操をかん養するためにも、保護委員会が、地域社会にはんらんしている不良文化財や有害環境に対する浄化運動に積極的に取り組んでいく必要があろう。
(四)公民館との連携
最後に保護委員会活動の進め方についてであるが、PTAとは別個の組織として、在学青少年の個性や能力に応じた体育的・文化的な活動を援助して健全育成の根を地域におろしていくためには、一方では世話校の援助活動と結びつきながら、他方では、生徒の日常生活圏内にある公民館の施設や諸事業と、緊密な連携を図っていくことがたいせつであると思うのである。
このように、保護委員会が、新しい課題にむかって、それぞれの地域の特質をじゅうぶんに生かしながら着実に活動を進め、地域ぐるみの生徒指導の推進機関として健全に発展することを期待したい。
少年補導数の推移(県警察本部調)
昭和41年を100とした指数