教育福島0011号(1976年(S51)06月)-006page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

解説

学習指導の展開に当たって

丑込幸男

は今、学習指導の充実に向けて日々着実な実践を続けておられることでしょう。

 

恒例の学校行事も終え、学校は今、学習指導の充実に向けて日々着実な実践を続けておられることでしょう。

県教育委員会としての「学校教育における施策の概要と各教科・領域等の指導の重点」につきましては、本誌二三月号に詳細に記述しましたので、御承知いただけたことと思います。これが実現のためには、それぞれの内容について具体的な計画をたて、継続的な実践の積み重ねが要求されます。

そこで、今回は、指導の重点のうち特に「学校教育における指導活動の充実1)教科指導の重点」について、その具体的な展開例に基づいて各教科指導上の留意事項を示すことにしました。(今月は国語・社会・算数〈数学〉・理科とし、九月号では音楽・図画工作〈美術〉・技術家庭・体育・英語について記載します。)

学習指導上の問題点はいろいろありますが、当面配慮すべき各科共通の事項を述べることにします。

 

一、習得の状況を確かめながら指導を進めること。

 

私たちは、どのようにしたらすべての児童生徒が指導目標に到達できるかを考えながら日々努力を重ねているわけです。ところが、よく調べてみますと、児童生徒にはさまざまな違いがあるのに気ずきます。1)学習のスピードの差2)学習のしかたの違い3)認知のスタイルの違い4)方略(ストラテジー)の違いなどがあげられます。したがって、教師が最適の方法として採用した指導法も、ある子供は全く異った反応を示すということがよくあります。こうしたことから、同一の時間内で同一の内容を同程度に習得させようとすることの困難さがよくわかりましょう。

そこで、学習内容のうち、習得されていない部分をはっきりととらえ、それを特別に工夫した個別の指導によって習得させるようにしなければなりません。それは、教材の選択とその提示のしかたなどの工夫であり、指導法の改善を意味します。

この習得の実態を明確にとらえるためには、なるべく狭い範囲の能力とその程度について度々評価をすることです。そして、未習得の内容を早期に発見し、早期回復の手だてを講ずることが重要です。学習途上におけるつまずきをそのままにして、進度のみに気を配ることは改めるべきことです。

 

二、教材の精選と指導の重点化を図ること。

 

人間として調和のとれた児童生徒の育成を図るためには、教科の指導が単なる知識のつめ込みにならないように注意しなければなりません。そして、児童生徒に自主的な学習を多く経験させ、知識の量よりも、自ら学びとる力を育て、たくましい実践力を身につけさせることが重要です。そのためには教科における基礎的・基本的事項を明らかにし、精選された内容について、一人一人にしっかりと身につくようにじゅうぶんに時間をかけて指導することが大切です。精選された内容をよく教えることです。その内容が一人一人にいかに身についたかということこそ重要なのです。

児童生徒の心に残しておく必要のある基本的内容を、一人一人の心に響く方法で指導していかねばなりません。このことは、学校における指導のすべての場面で常に配慮して実践するよう心がけることが重要です。

 

三、学校を充実感を持って生活できる場所とすること。

 

学校は、児童生徒の一生を通ずる人間形成の基礎として必要な事項を習得させる所であり、多くの友人と協力し合って仕事のできる場所でもあります。そこでは、一人一人が、所属する集団によってその存在が認められ、その中での役割分担が明確に決められていることが重要であります。こうした連帯感に支えられたふん囲気の中でこそ、充実した生活が営まれるものと思います。

また、学校は児童生徒に学習能力を身につけさせる所です。そのためには発達段階に応じて、児童生徒にまかせる授業を多くしていくことが重要です。それは、児童生徒への信頼につながります。そこから、児童生徒は自らの責任を自覚し、それぞれに努力を継続していくようになるものです。一つの目標が自らの力で達成できれば、次々と意欲も高まっていくものと思います。その中途において、示唆に富む勇気づけをしていくことこそ、教師の大事な仕事なのです。

 

(義務教育課主幹)

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。