教育福島0011号(1976年(S51)06月)-009page

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いないといわれる。

対話の能力とは、要するに「話し合う力」であり、それは「話す力」と「聞く力」の両方を含むものである。即ち聞いて話す、話して聞くという連続活動であり、その活動を通して、話し合いに参加する各個人が理解を深めたりしながら認識を高めていく活動なのである。

このような展開は、いわゆる集団思考の成立の姿にほかならない。対話によって互いに触発され、個人の思考の能力を越えた思考が展開される。

このことは、すべての教科の学習でみられることであるが、他教科と違うのは、国語科ではそのことに目標をおき内容を設定して学習を展開しなければならないということである。他教科では、学習の方法として、過程に過ぎないことが国語科では学習内容として取り上げなければならないのである。

しかし、「聞くこと・話すこと」の指導、特に対話の力の指導がじゅうぶん成果をあげ得ない理由の一つに、国語科の指導でも、毎日毎時、話し合いは行っているという日常性のために、かえって指導が徹底しないということがあるのではないだろうか。

活動として行われていることと、指導とははっきり区別して指導計画を検討してみる必要がある。小学校・中学校ともそれぞれの学年の指導内容をおさえ、年間茄時間を確実に指導に当て目的的な授業が展開されるよう改善する必要がある。

その際、聞くこと・話すことの学習が、教科書の文章の読解によって、聞き方・話し方の知識の学習に終わらぬように、「話しことばの学習は、話しことばで」の原則を忘れぬようにしたい、そのためには、音声言語による教材を活用し学習の効果をあげることや、話し合いの話題の選定に当たっては、児童生徒の身近かな生活の中から適切な話題を設定してやるなど、教材化の細かな配慮がたいせつである。

指導事項では、

○主題を明確にする

○話の組み立てを考える

○正しい効果的な言葉づかい

○正しい発音に気をつける

○相手を尊重しつつ正しく聞く

○感情に支配されないで落ちついて

話すなどは、聞くこと・話すことの指導でたえず訓練していかなければならない事項である。

 

二、読むこと、とりわけ読書指導の充実

 

読解指導と読書指導の関連を考慮して、読むことの指導の充実に努める。(小学校)

 

文章を正確に読む能力を高め、豊かな読書力を身につけさせるよう努力する。(中学校)

 

「国語による理解と表現を通して、知識を身につけ、考えを深め、心情を豊かにする。」これは、小・中学校に共通な国語科の教科目標である。

言語技能の指導とともに、教材内容の価値に触れさせ、精神形成・人間形成をめざすことは国語科の大きな役割である。

従来「読むこと」の指導が、とかく読解指導に偏り、心情を豊かにし、児童生徒の精神的成長を図ることや、望ましい読書習慣の形成などに配慮がゆきとどかなかったきらいがあった。

読書指導の重要性はわかっていても毎日の実践の中では、効果的に行われていない実態がある。

○読書指導の目標がはっきり理解されず、読解指導の中に埋没している。

○国語科の読書指導の「指導計画」がはっきり立てられていない。

○学校図書館教育との性格の混同から、その限界や指導の重点があいまいであること。

○指導時間についての配慮がふじゅうぶんであること。などがその原因として考えられる。

ところで、国語科における読書指導は、個人的な自由読みを主体とするいわゆる図書館としてのそれとは異なりあくまで「読むこと」の中の読解・鑑賞指導との関連においての読書指導である。したがって、読書指導という言葉が図書館活動のそれとの混同があるとすれば、むしろ国語科では、読解・鑑賞指導を起点としての読書への指導と理解することが妥当であろう。

次に、読書指導と読解指導の違いについては、読解や鑑賞の指導と、読書指導とが両者相互関連的におしすすめられではじめて、読解力も理解力も養われ、人間形成に役立つ読む力も養われることになる。教室の中での指導が読解技能を養うことだけにとどまらせず、進んで読書することへの機縁ともなり、意欲の誘発にもなるよう留意して指導したい。

 

(一) 読書指導のねらいと活動

学習指導要領では、小中学校とも、読書指導の目標は、読むことの目標として、読解指導と一体化した形で述べられている。

読書指導でねらうべきことは、

ア、読書の喜びを味わわせ、読書意欲を高める。

イ、好ましい読書の仕方を身につけさせる。

ウ、実際の読書体験をさせる。

エ、読書習慣を養って人間形成に役立たせる。ことであり、中でも意欲を高めることにその中心があると考えられる。

以上のように読書指導のねらいを考えた場合、どんな学習活動をさせればよいだろうか。

従来の読解指導とは違った次のような活動を展開する必要がある。

 

 

 


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