教育福島0011号(1976年(S51)06月)-012page
事象をリアルにとらえ、それを契機として学習を深めていくことが効果的である。
社会観察の目を育て、観察結果をまとめる力を養うためには、事前指導から事後指導にいたるまで一貫した立場に立った指導がたいせつである。
次に、指導の着眼点について述べる。
(1) 観察の目的をは握させる。
観察に当たっては、「何のために、どこに行くのか」という目的を明確には握させ、児童生徒が、問題意識をもって観察にのぞむことが、効果ある観察学習への出発点である。
(2) 観察の視点を明確にする。
社会事象は、複雑多岐であり、また変化の激しいものである。観察や調査に当たって、「よく見てきなさい」「よく調べてきなさい」だけでは観察力は伸びてこない。観察の対象となる事実・事象について、視点を明確にして取り組ませることが重要である。
例、小学校第三学年「町の見学」のとき、「町のようすは、どのようになっているか」ではあまりにも抽象的である。これをもっと具体化して、
1) 大きな建物の位置や分布
2) 店の種類や数
3) 商店街と住宅街の分布
こうした視点が明確にされてはじめて、学習の対象が意識化され、効果的な観察が進められるのである。
しかし、観察視点も多くなりすぎると焦点もぼやけてくるので、児童生徒の能力の実態や発達段階に応じて与えていくことがたいせつである。
(3) 観察の楽しさや喜びを体得させる。
学習への興味・関心は、問題解決を図るうえで原動力となるものである。
観察に当たって、児童生徒の自発性を重んじ、素朴な疑問、驚きをたいせつにし、現地と地図を対比して読図の楽しさを味わわせたり、歴史事象に接することによって創造の芽を育てていくことができるのである。
(4) 観察の記録をとる。
観察は、視点に従って詳しぐ見る活動と同時に、観察結果を記録する活動が並行して行われなければならない。
用意した白地図に、観察事項を記入したり、要点をメモしていくなどの活動をとおすことによって、確かな観察力の育成を図ることができるのである。
(5) 観察結果を効果的にまとめる。
社会事象の特色をは握したり、問題を発見し、観察結果を次時の学習に発展させていくためには、観察したことがらを効果的にまとめていく作業が必要である。その方法としては、
○ 地図にまとめる.
○ グラフにまとめる
○ 図表にまとめる
○ 絵に表わす
○ 文章にまとめるなどがある。
観察−記録−整理の活動をとおすことによって、調べ方・記録のし方・まとめ方なども理解され、観察結果に基づく学習の発展も期待できるのである。
○ 数量観察の例
交通量しらべ 大町通り
観察結果を数量化したり、比較したりすることによって、社会事象を分析的にとらえることもでき、また、その事象の背景にある社会的条件を探っていく糸口を見い出すこともできるのである。
観察力の育成に当たっては、学年における観察能力育成の重点を的確におさ、え、これを指導計画の中に正しく位置づけて実践化を図っていくことがたいせつである。
四、資料活用能力をのばす指導
社会科の特質は、複雑な社会事象を学習の対象として、社会の見方・考え方を深めていくところにある。
したがって、児童生徒に社会のしくみや社会事象の意味をは握させていくためには、適切な資料の提示と相まって、児童生徒の資料活用能力が高まっていなければならない。
資料の適否と、活用能力の質が授業の成否を決定づけるといわれている理由もここにあるといえよう。
資料活用能力を高めていくためには思考のみち筋に合った資料の提示とともに、資料の選択・作成・解釈などの能力が育つための指導を具体教材に即して継続的に積みあげ、その伸長を図っていかなければならない。
次に、資料活用能力をのばすための着眼点について述べる。
(一) 資料選択の視点を明確にする。
1) 授業目標達成のための資料であること。
2) 児童生徒の実態に合い、興味・関心をひくものであること。
3) 問題場面が明確であり、考えさせる資料であること。
4) 信頼性があり、出所・出典が明らかな資料であること。