教育福島0011号(1976年(S51)06月)-013page
(二) 資料の見方について指導する。
資料には、絵・写真・スライド等の視覚的なものから、地図・統計・グラフ・図表・年表・文章資料等多様にわたる種類のものがある。
これらの資料を、授業の目標・内容と結びつけて効果的に活用していくためには、資料の見方について正しい理解がなされていなければならない。
(1) 資料を読みとる一般的な視点。
1) 何を表わしたものか。
2) いつのものか。どの地域のものか。
3) どのようになっているか。
4) どんな特色や変化があるか。
5) なぜ、そのようになっているのか。
このような視点にたって、資料を注意深く見、自ら資料に問いかけていく態度を育てる指導を進めることが必要である。
(2) 資料を読みとるための必要な知識を理解させる。
資料を正しく読みとるためには、その基礎となる知識が理解されていなければならない。地図記号、単位等を確かにしたうえでの読みとりがたいせつである。
○ グラフ読みとりの指導例
1) 読みとりの順序
ア 表題を正しく読む
イ 単位をおさえる
ウ 調査年月日をおさえる
エ 事実を正しく読む
オ 事実のもつ意味を考える
2) 指導事例
産業別の就業人口と国民所得の割合
(国民所得 統計年報 1976版)
右図のグラフは、中学校第三学年公民的分野「日本経済の発展」における就業人口と国民所得の割合を示したものである。二つ以上の要素が組み合わさっているので、生徒も抵抗を感ずるものである。
指導に当たって、特に注意しなければならないことは、事実を正しく読みとらせていくことである。
就業人口では、第一次産業で働く人の割合が大きく下がり、第二次・第三次産業に従事する人の割合が高いこと就業人口と国民所得の割合の比較では第一次産業の就業人口の割合に比べて国民所得の割合は低いことなどを、関連比較のうえにたって、正しくは握させていくことがポイントである。こうした事実は握から、なぜこのような現象になってきているかの要因追求へと発展させ、産業構造の変化を理解させていく指導を工夫していくことが必要である。
3) 資料の特性をおさえ提示の方法を工夫する。
児童生徒に、社会の事実・事象を知らせ、思考を深めていくためには、資料のもつ特性をおさえ、これを、指導の各段階に応じた提示を行って、社会事象のもつ意味づけをは握させていくことが必要である。
指導段階における提示資料をまとめると次のようになろう。
(1) 問題は握のための資料
○ 変化を表した資料
○ 特色を表した資料
○ 矛盾場面を表じた資料
○ 比較を表した資料
(2) 事実をは握させるための資料
○ 事実が正確に表されている資料
・写真 ・統計、グラフ、文章
・地図、分布図 ・年表等
(3) 関係をは握させるための資料
○ 社会事象を成立させている条件や関連、要因を表した資料
・地域相互の関連をとらえる資料
・地域の特性をとらえる資料
・歴史的な発展、時代の特色、変遷をとらえる資料
・社会的なしくみや機能の相互関連を表した資料
(4) まとめのための資料
○ 社会事象のもつ意味を表した
資料
また、資料の提示に当たっては、次のことに留意していく必要がある。
1) 授業目標からみて、必要な資料を精選し、資料過剰に陥らないようにする。
2) 問題場面や、事象・事実の相互関係が読みとり易いよう工夫する。
3) 中心資料と関連資料との組み合わせを効果的にする。
4) 児童生徒の直観的な印象や素朴な疑問をたいせつにする。
5) 確かな事実は握を基にして考えさせる。
(四) 思考力を育てる指導
思考力とは、社会の事象・事実を観察や資料に基づきながら、比較・関連条件・因果等からとらえ、社会事象のもつ意味や全体的傾向を理論的に追求していくことのできる力である。
従って、思考は目標に対してはたらくものであり、単なる知識の記憶や再生ではなく、問題に対して自らの力で考え、意味内容を発見していくことのできる能力であるといえよう。
思考力を育てていくためには、その前提となる基本的な教材の精選とともに、思考の場の設定、問題意識の啓培児童生徒の主体的活動の助長等から指導を進めていくことが必要である。
(1) 教材の精選・重点化を図る。
思考を練るためには、思考に値する教材の準備が必要である。
断片的な知識を集積した教材では思考力は育ってこない。
目標に照らして、価値ある教材を見