教育福島0011号(1976年(S51)06月)-014page
きわめ、教材相互の関連や構造をとらえ、「基本的な教材で深く考えさせる」ことを重視していかなければならない。
教材精選の手順をまとめると次の図のようになろう。
◇ 教材精選の具体例
○ 第五学年「日本の農業」
(1) 学習指導要領の目標分析
目標(1)……国内各地の主要な産業の実態や国民生活との関係を理解させ、国民の一人として、産業の発展や資源の保護利用に対する関心を深める。
目標3)……社会事象のもつ意味やその全体的傾向などを、地図・年表・統計資料などを活用しながら考えていく力をのばす。
(2) 学習指導要領の内容分析
内容(2) 日本の農業について、おもな農作物とその分布、土地利用や生産技術の面からみた特色を理解させ、農業生産と国民生活との関係、増産その他の工夫に努めてきた人々のはたらきについて考えさせる。
3) 学習指導要領の目標・内容をふまえ構造化を図る
日本の農業
右図でわかるように、日本の農業の中心概念は、「米作中心の農業」とまとめることができ、基本要素として、1)〜4)をあげることができる。
また、重点内容としては、1)〜3)までをおさえることができよう。
4) 指導計画を作成する
図に示した内容の構造を基にして、指導計画を作成していくわけであるがその視点として、地域・児童の実態からみて適切な教材を選び、目標に昭らして重みづけを図っていくとともに、学習を通して、具体事項・基本要素・中心概念が理解され、能力育成が図られていくような授業過程を組織していくことがたいせつである。
5) 問題意識を掘り起す
授業の成否は、児童生徒がどれだけ強い問題意識に支えられて学びとっているかによって決まるものである。
問題への関心意識が強ければ強いほど、学習意欲も高まり、思考も深まってくるのである。
問題を意識するということは、問題現象に対して、「おかしい」「なぜか」という疑問をもつことと、問題を「調べたい」「わかりたい」という積極的な学習の構えが生まれてくる状態であるといえよう。
こうした問題意識を掘り起こすためには、次のような方法が考えられる。
1) 観察によって問題をつかむ。
○学校めぐり ○町めぐり ○地域の観察
2) 資料から問題をつかむ。
ア 事象の変化・発展の場からつかむ。
○産業構造の変化 ○町の変化
イ 事象を比較してつかむ。
○気候の差異 ○文化の差異
ウ 事象の矛盾からつかむ。
○日本の耕地面積と米の生産高の推移
エ 事象の特色からつかむ。
○東大寺の大仏 ○鎌倉時代の仏像
3) 身近な問題や時事問題に関心をもたせる。
(6) 思考のしかたを指導する
「考えよう」だけでは、思考は育ってこない。どのように考えていけばよいかを理解させていくことが必要である。その視点としては、
1) 共通性に着目させる
2) 相違性に着目させる
3) 関連性に着目させる
4) 変化・順序に着目させる
5) 因果関係に着目させる
6) 特色に着目させる
こうした視点から考えさせ、社会事象のもつ意味をは握させていくことがたいせつである。
この他、思考を深めるための指導段階の設定・発問・助言の方法も重要な内容である。
情報化社会の中にあって、社会の諸事象を的確にとらえ、意欲的な学習を展開していくためには、基礎的能力の育成を重視した指導を展開していかなければならない。能力育成のためには基礎的知識・技能が児童生徒に確かに理解され、定着していることが条件であることを忘れてはならない。