教育福島0011号(1976年(S51)06月)-019page
考える場面があるが、このような統合の考え方はたいせつである。この統合的な考え方によって、台形の面積の求め方を類推して三角形の面積を容易に求められるのである。そして、この統合的な考え方は、三角形平行四辺形、長方形、正方形の求積公式が、一つの台形の求積公式に統合されるというところまで発展して容易に理解させることができる。これが全く別なものとして考えさせると、考えの手がかりをつかめないばかりか、なかなか解決の糸口がみつからず算数はむずかしいものという印象を与えてしまうことになる。
四、児童生徒がわかりやすい学習指導への改善を図り、学習意欲を高める。
(一) 発見的、創造的に学び取らせること。
発見的、創造的に学び取らせるということは、数学的な考え方からいうと発展的な考え方を育てることにつながる。算数・数学の学習では、絶えず発見的で創造的な発展を図るとともに、一面では、創造したものをより高いあるいはより広い観点から統合してみられるようにする。更に、これを次の飛躍への足場としていくなど、創造しつづけてやまないようにすることがだいじであり、このような能力と態度を伸ばすことが期待されているのである。
そこで、発見的、創造的に学び取らせるには、算数・数学の学習の系統をふまえたり、数学の構造をよく捕らえて指導することがだいじになってくる。たとえば、整数だけでは、基準の量より小さいものの大きさを表現することができないので、その解決として、小数を生みだしたり、整数の減法を可能にするために負の数を発見させたりすることがたいせつなのである。ここで注意しなければならないのは、単に教えこむというのでなくて、どうしても課題解決していくためには必要であるという場面にたたせることが、発見的、創造的に学びとらせる学習を展開することになるのである。
例一の授業展開の構想で、学習課題「三角形の面積も台形の場合と同じように求めることができないだろうか」というのは、発見的、創造的に学びとらせようとしている意図からきたものである。三角形の面積公式を知識として教えこんだり、暗記させたりするのはやさしいことであるが、このようにして得た知識は忘れてしまえばそれまでだが、児童たちが発見し創造したものは、忘れ去ってもまた再びっくりだすことができるのである。台形の面積公式を忘れても、二つの合同な台形を組み合わせたことを思いだせばよいし、また、三角形の場合も同じであったと
覚えていればそれでよいのである。
(二) 児童生徒自身が学習成果を正しく評価すること。
学習の動機づけとして外的動機づけの一つとして個人間競争がよく用いられるが、これは、競争意識が過剰になると勝つことだけが目標になってしまって、他をおとし入れたりごまかしたりすることになりかねないようになる。これに対して、内発的動機づけの一つに、自己自身の能力に対するちょう戦がある。これは自分自身の能力に対してのちょう戦であるから、他をおとしいれるということもなく、自己自身の高まりを目的において努力することができる。すなわち、自分の能力の段階に応じた学習目標を設定したり、自分自身が学習の成果を正しく評価したりして、積極的に取り組む学習のしかたである。したがって、この学習のしかたは、自己の現地点を正しく理解し、自己志向し、自己実現へ向っての学習である。そこで、児童生徒自身が学習の成果を正しく評価し、積極的に取り組むことができるような学習指導をいっそう工夫されることが望まれるのである。
そのために
○ 自分自身の能力をためす機会と内容を工夫して与える。
・ 学習課題が解決され、理解された段階で必ず評価の時間をとる。(例一参照)
・ 評価内容は学習目的としたもので、自己評価が容易であるもの。
・ 毎回の評価結果が比較反省できる問題数であること。
○ できなかったことが、できた!という実感を捕らえさせる自己評価の方法を工夫する。
・ 自分の現地点の能力を捕らえさせておく。
・ 自分のできる段階、できない段階をよく捕ら、えさせておく。
・ できなかったことができたときには相互に喜び合うことができる学習のふんい気をつくっておく。
・ 教師は児童生徒の個々の能力をよくは握しておき、児童生徒へ賞賛の言葉をおしまない。
○ 「ここまでできた」「だからもつとさきができる」という方向で自分の能力にたちむかわせるよう工夫する。
・ 各自のそれぞれの到達目標を明確におさえさせる。
・ 「きのうは何点とったからきようは何点とるぞ!」という態度でたちむかわせる。
○ テストされるという考えでなく自分から「できるようになった、ためしてみよう」という自己評価の態度でたしかめにのぞませるよう工夫する。