教育福島0011号(1976年(S51)06月)-022page
図2 学習指導要領A領域植物に関する内容の系統(小学校)
したが、第二学年では、一つの種子から発芽した個体が開花結実して、また初めと同じ形をした種子を生産するという生物繁殖の基本形式を理解させることで、今後の学習の基礎となる。
「環境とのかかわり」では、「日当たり」が一つの重要な点であることは第三学年以上の内容から見れば読みとれよう。「日当たり」は、光と温度条件が複合した条件であるが、この学年では分離しないで取り扱っている。第一学年では、水条件に気づかせてきたがこの学年では、「日当たり」の条件を植物の成長の違いに意図的に目を向けさせる。そのために対比実験的栽培が要求されるが発達段階からみて児童のとく自然な発想をたいせつにして、確かめてみようというようにしたい。
「密生と疎生」を比べたときの成長のよしあしは、成長の段階によって異なることがあるし、個体でみると、密生したものは成長が悪くとも群落全体としてみるとかえって良い場合もあり一概に価値判断させることは誤まった見方をさせることにもなる。光条件温度条件について今後学習するし、中学校で取り上げるので、ここでは、あまり混みすぎて生えたものは全部うまく育つとは限らず、中に育ちの悪いものもある事実に気づかせる程度で軽くふれる。
「生物の多様性と共通性」については、少くとも、二種類以上の植物を栽培して比べないと一般化ができない。エとオがここで取り上げられている内容であるが、ア〜オの関連からみてエを重点として取り上げる。指導に当たっては、ヒマワリを中心教材とし、他に一、二種類の草花を副教材として並行して育てて比較するか、また秋まきの草花によって時期の違いや成長の様子の違いを印象づけるといった教材の精選が必要である。
この図から学年の重点を見いだすには、今後の学習の基礎になる内容(系統性)であるか、この学年でしか学習されない内容なのかをよく捕らえて重点化を図る。
三、探究学習
現在の理科学習は、探究の過程を重視しつつ、科学の基本概念の習得を目ざしている。しかし、まだ断片的な知識のつめこみや、科学の方法のパターンの押しつけになってしまって、真の知識や能力は定着していない。現在の授業の中で、できる限り一人一人の学習意欲をたいせつにしながら、興味や発達段階を適切に捕らえ、個々に応じた探究をさせることが基本として考えられなければならないであろう。
(一) 探究学習に適する教材の条件
探究学習の一般的過程が、いかなる教材でも行われるわけではない。中学校の「原子の構造」「イオンモデルの形成」「ヒトの神経系」などの単元は、指導技術の工夫によって多少探究的な学習の場は設定できるが、本質的には無理である。探究学習を展開するには、教材が少くとも次のような条件を具備していることが必要である。
ア 数多くの疑問が児童生徒によって発見することができる。
イ その疑問の解決法を児童生徒が考えることができる。
ウ その解決がある程度の限られた時間内でできる。
エ 児童生徒だけで実験しても安全である。
オ 器具など手軽に準備できる。
(二) 自ら問題を意識し、未知の問題にいどむ場の設定
生き生きとした探究をさせるには、いろいろな方法があろうが、最もたいせつなのは問題に取り組む最初である。
○ 児童生徒自らが問題を持ち、自ら進んで解決したいという気持ちを強く持たせる。そのため授業においては、なにかのきっかけがない限り、多くの児童生徒がこのような気持ちになることは期待できない。
○ 教師によるたくみな問題提示により、多くの児童生徒の心に疑問や問題が生じる。
児童生徒が、問題を捕らえ意欲的に学習に立ち向かうための方法は、教師による発問であれ演示実験であれ、心を強くゆさぶる事物・現象に当面させる(驚き・疑問・矛盾・当惑等)ことが重要で、「集めたい、手に入れたい。」