教育福島0012号(1976年(S51)07月)-009page
かめられるようなテスト計画を立て、テストの目的を明確にし、活用を考え、精選して実施するように留意する。
個性を伸ばす進路をめざして
−高校教育と進路指導−
一、は じ め に
ここ十数年来の高校及び大学への進学率の増加傾向は、その後も着実な伸びを示している。このような国民教育水準の向上という好ましい傾向の中で必ずしも目的が明確でない入学者や、大学における大量の留年者を生み出しつつあることも事実である。
高度成長経済から資源節約的な減速経済への転換が浸透する中で、学歴よりは能力・適性が尊重される傾向が強まってゆくとすれば、学校教育の中で一人一人の生徒の能力・適性を正当に評価し、自己実現への意欲を高め、正しい職業観や勤労観を育成することは重要な責務となってくる。
永井文部大臣は、『学校・家庭・社会』と題する論文の中で次のように述べている。
「学校信仰は社会における学歴偏重と裏と表の関係にある。これからの社会の動きを考えると、企業も官庁も学校も、学歴偏重主義をとる限り、活発な活動を期待することはできない。(中略)学校信仰の時代から教育尊重の時代へ。その道は決して平坦なものではない。しかし、それは、すべての日本人が協力して、根気よく、何としてでも切り拓かなければならない新しい道なのである」 (教育委員会月報第三〇〇号)
一人一人の生徒の可能性を発見し伸ばしてやるうえで、また、彼らの「生き方」や「人生設計」を指導・援助してやるうえで、進路指導の活動領域はますます重要になっている。
二、進路指導の位置づけ
高等学校の現行指導要領は、第一章総則の冒頭において、「地域や学校の実態及び生徒の能力・適性・進路等をじゅうぶん考慮し、課程や学科の特色を生かした教育ができるように配慮して、適切な教育課程を編成する」)とを定めている。このことを受けて、同じ章の「指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項」の中に、「個々の生徒の能力・適性等の的確なは握に努め、その伸長を図り、生徒に適切な各教科・科目や類型を選択させるように指導するとともに、進路指導を適切に行うこと」をあげている。
進路指導がこのように第一章総則に規定されていることは、この指導が単に特定の時間帯になされれば足りるというものではなく、教育課程の全体と密接な関連をもつ活動であることを示している。また、一部特定の教師の努力によってなされる活動ではなく、全教職員の協力によって成立する指導であることも示している。
このように、高校教育の全領域をカバーし、指導教師全員の協力によって組織的になされる進路指導とは、どのような活動内容から成り立っているものであろうか。最終学年における”進学か就職か”という選択指導だけでなく、高校への入学の時点からはじまる活動内容について考えてみよう。
三、進路指導の活動内容
活動内容は、次の六つの領域に分けられる。
(一) 生徒理解及び自己理解
教師が生徒をよく理解することは教育活動が成立するための大前提であり、また、生徒が自分自身について理解を深めることは、自主的な進路選択や自己実現のための必須条件となる。
このような教師の生徒理解、生徒の自己理解の手だてとしては、個人資料が大きな役割を果たしている。県内の各校では、それぞれの工夫にもとづいて個人カードや表簿の形で整備されている。これらの資料は、観察・相談・検査等によって豊富なものとなり、生徒が自分自身で進路計画を立てるための資料としても、教育的配慮にもとづいて還元されてゆく。
(二) 進路情報の収集と活用
卒業後、更に進んで上級学校に学ぶか、ただちに職業生活につくかは高校生の誰もが経過しなければならない一つの大きな岐路である。進学と一口に言っても、大学・短期大学・各種学校など、その内容はますます多様化しており、職業の種類や職務分野も、産業社会の変化とともに多面的になっている。
このような新しい情報の収集や活用もたいせつな指導活動となる。それぞれの学校内で、生徒進路委員の協力活動によって視野の拡大を図り望ましい職業観の育成にも努めている。資料室・掲示板・校内放送・コーナー設置など、視聴覚面からの多角的な活用も進められている。
(三) 啓発的経験
見ることや知ること以上に、体験することの教育的価値が高いことはつとに指摘されているところである。昨年十月発表された教育課程改善の