教育福島0012号(1976年(S51)07月)-021page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

10.50年12月18日 第二同県進協理事会(平工業高)

11.51年2月9日 全進協常任理事会(東京 事務局から一名出席)

 

二、全国の状況

 

全国進路指導連絡協議会(略して全進協)は五十年二月十日都立戸山高校において、全国代表者約九十名を集め設立総会が持たれ、正式に発足した。この全国組織結成の場では、真剣に多くの論議がかわされたが、その趣旨はおおむね次のごとくであった。

多くの生徒は、それぞれの個性、能力等を異にし、無限の可能性を秘めてはいるが、将来何になることが自分の生がいにとって最も幸福であり、かつそれが社会のためにより役立ちうるかということについての認識は、極めて漠然としている。いうまでもなく進路指導とは、教師がこうした一人一人の生徒を愛情と理解をもって根気よく指導し、生徒自らの自覚によって職業観価値観へのめざめを促し、それをさらに伸ばして行くことにほかならない。これは教師お互いが自分の専門教科以外のもっと幅広い知識や研究、実践を必要とし、これこそが重要な任務であり、とうてい専門教科の指導のみによってはよき教師たり得ない。

現在における進路指導は、おおむね次の二つのパターンが考えられる。まず一つは、普通高校において進路指導の名において研究されていることで、端的にいえば進路指導即進学指導であり、生徒の適性や能力・資質などを無視した、いわゆる”配分指導”又は”合格指導”ではないであろうか。いかにして一人でも多く国立大学に入学させるかということであったり、合格者の多い高校が名門校であり、合格者数によってその高校に対する社会的評価が決まるというような旧へいが今なお捨て去られていない。

第二に、このような状況の中で、実業高校無用論さえ耳にする昨今、実業高校においてだけでも生徒のための本来の進路指導が期待されるのであるがここでも多くは単に就職あっせんをもって進路指導と考えられている。進路指導が本人の適性や能力に関係なく、経済成長の上にあぐらをかき、求人のわくにはめ込んでいく周旋業化しているのではなかろうか。進路指導主事が就職のあっ旋屋で、一流企業に多く合格させた者が名進路指導担当者であるというようなことが、ひいては生徒自身の学習意欲を喪失させる遠因となっているようにも考えられる。

高校における進路指導が、学校長をはじめとする全教師の共通理解と協力によって、全教育課程を通じて行われるべきことは、文部省論「進路指導の手引」等でも終始強調されてきたことであり、特に学習指導要領の改訂により、個々の生徒の能力や適性等の的確なは握に努め、その伸長を図り、生徒に適切な教材、科目や類型を選択させうるよう指導するとともに、進路指導を明確に位置づける規定が示されている。この基本原則、原点に立って、学校長は全教師をリードし、教師はまた自分の専門教科の授業を行うことで任務をなし遂げえたとしてはならない。

高度成長のもと、若年労働力の不足から大企業等における学歴偏重のへいはかなり是正されてはきたが、依然として著名大学に対する指定校制度は生きており、それらを中心とした進学熱はますますエスカレートの傾向にある。したがって、教育評論家や学者が、声を大にしてガイダンス論を提唱してもそれのみでは現状の問題解決の道は遠い。

結論として、我々現場教師が進路指導のあるべき姿に目覚め、それを強力に推進していく以外に道はないのではなかろうか。こうした流れを変えるキーポイントを握る者は誰でもなく、進路指導に直接たずさわっている教師であり、成り行きのままに推移させることの罪は、進路指導担当者自身の中にあるといえる。

このような意味から、全国の同じ立場にいる者同志が、その力を結集し、自主的協議組織をつくり、真剣に研究討議しあえる場が生まれれば、多くの壁を打ち破ることもじゅうぶん可能であると考えられるのである。

全進協は、ブロック単位の加盟が原則であるが、ブロック単位で加盟しているのは関東・近畿・九州の三ブロックで、このほか今春、四国ブロックの組織化ができた。これらブロック以外の東海・中国・東北・北海道は、今年度中に組織化ができる見通しで、北信越の組織化は少し遅れそうである。

五十年度中に全進協としてとりあげ活発に活動した項目としては、次のようなものがある。

(1) 就職関係

(ア) 就職のための選考開始時期の検討

(イ) 公務員資格試験への統一見解

(ウ) 就職差別の問題(定時制生徒、外国籍生徒、心身障害生徒、同和対象地区生徒等)

(エ) 統一応募書類の改善

(オ) 就職内定生徒の卒業前後の実習、研修等の禁止に対する統一見解

(カ) 企業の学校訪問の規制

(キ) 県外企業の招請による教師の企業見学の規制

(2) 進学関係

(ア) 大学入試制度の改善要請

(イ) 調査書の内容改善要請

(ウ) 各大学の入学願書内容の改善要請

(エ) 大学推薦入学制度の促進

(オ) 実業高校からの大学入学の道をひろげる方法の検討と要請

(カ) 各種学校の位置づけと取扱いの検討

(3)共通事項

(ア) HRにおける進路指導のあり方の研究と実践

(イ) 進路指導主事の位置づけと、負担軽減の問題の検討と要請

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。