教育福島0012号(1976年(S51)07月)-025page

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教育随想

 

家庭学習ノートの添え書きを通して

高宮政博

〇A子のノートから 二月二十五日

 

〇A子のノートから 二月二十五日

文章題に取り組んでいること、うれしく思います。文章題を解決するために授業のときもいろいろくふうしていますね。線文図やベン図・表など。図などに表わしてから式を考えると、式を立てるのが容易になります。大いに図などを活用してください。学年が進むにつれ頭の中だけで考えるのがだんだん難しくなります。今から図や表に表わして考える習慣をつけておきたいものだと思います。まちがった問題をもう一度考えて明日みせてくださいね。

(文章題ひとつひとつに添え書きしてあるが省略)

 

〇B男のノートから 四月二十六日

B男のきのうの学習、先生はすばらしいと思います。いっか学級会の時間に模造紙に書いて発表してもらいます。

みんなの前で発表できるように、川の名前をよく読めるようにしておいてください。先生もこれを読んできょうはひとつ勉強になりました。先生も気。つかないでいることがいっぱいあります。そして、友だちもこのことについては知らないでしょう。だから自信をもって発表してくださいね。資料を使って調べていくと、もっと何かがわかるかも知れませんね。

(B男は川の流量の毎秒平均を調べてその結果をつぎのようにまとめてきたのである。)

「川の流量を調べてわかったことはまず太平洋側より日本海側の方が流量が多いということ。それに、南にいくにつれて流量が少なくなっていくことです。水の流れのことで、北日本の方は山が多いので水の流れは南の方より流が速いと思っています。これと、南側に行くにつれて流量が少なくなっていくのは、何か関係があると思います。」

 

〇C子のノートから 五月十一日

運動会の練習で疲れているのにもかかわらず、C子は分数のかけ算を覚えようとしていっしょうけんめい努力してきましたね。先生の注意をよく守り勉強したこと、先生はうれしく思います。かけ算のしかたをこのぺ−ジとつぎのページの学習で学びなおしたことC子にとってほんとうに立派な勉強でした。約分のしかたもよく理解しましたね。さらにこの計算のしかたを確実に覚えるためにきようの家庭学習もぜひ、分教のかけ算をやってほしいと思います。明日ノートをみるのを楽しみにしていますよ。

(C子の学習記録表を見ると、この日の家庭学習時間は二時間半、計算を覚えようとして……。と記されている。

学力は低いがC子は今、いっしょうけんめい学ぼうと努力している。)

※学習記録表……毎日の家庭学習の教科のねらい、学習時間とそのグラフ、反省等を児童自身が記録する表。

 

二十四名のこの子供たちを担任して一年二か月が過ぎようとしている。かって取り組んだ二年何か月かの自作プリントを学習に反省を加え、ようやくたどりついた私の家庭学習の取り組み方である。時にはうよ曲折、遅々として進まない児童もいる。しかし、児童自身わかってきたこと、それは学ぶときの謙虚さと、続けることの難しさと尊さ、努力した後の喜びである。授業とともに、一冊の家庭学習ノートを通しての児童とのふれあい、私は、あせらず、休まずと思うのである。

授業の中に児童の学習が生かされてこの子らが喜びを顔にした時の感激は何に比することもできない教師としての喜びである。

かって、アームストロング船長が月面に第一歩を印した時、「私の一歩は小さいが、これは人類の大きな飛躍である一と語ったことばを忘れない。私の小さな一歩が、子供たちの大なる飛躍になることを願いながら、きようも児童のノート一冊一冊に見入る。

明日もまた、私の机上にはノートが積まれることだろう。

 

(古殿町立田口小学校教諭)

 

 

 


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