教育福島0013号(1976年(S51)08月)-017page
(2) 教育の実際
保育については、普通児と同様に、全人的発達をうながすために、六領域(言語・社会・自然・音楽リズム・絵画製作・健康)にわたり指導がなされていますが、聴覚に障害を持つ幼児たちでありますので、次に述べるようにことばの指導や聴覚利用の訓練など、耳の不自由を補うための特別な教育も行われております。
1) ことばの指導
イ、感覚訓練
ことばの世界に入れるために視覚・触覚を中心とした諸感覚の訓練をします。
ロ、読話指導
お話の練習(4歳児学級)
はじめは口唇の動きに意味のあることを知らせ、ことばの存在に気づかせます。そしてしだいにその内容を視覚的に読みとることができるようにしていきます。
ハ、発音・発語指導
自分の声を耳でたしかめることができないのでたいへん苦労しますが、メガフォンで声の振動を感じさせたり、鏡で口唇や舌の動きを確かめたり、吹く遊びをしたりことばを話すときの息の使い方を覚えさせたりしながら、正しい発音に近づけていきます。
ニ、文字指導(記号学習)
読話・発語をよりたしかなものにするため、早くからとりあげます。
集団補聴器をかけて聴覚の訓練(5歳児学級)
以上イ〜ニまでの学習は、音声言語・文字言語の基礎となるもので、これらを遊びを通して理解させ体得させています。
2) 聴覚の訓練
日常生活の音声が全く聞こえないものから、大声には反応したり、補聴器をつければことばもいくらか、聞きわけられる者など残存聴力の差は大きいわけです。この残存聴力を最大限に活用し、開発するために、聴覚の訓練は幼稚部における重要なものであります。
イ、補聴器の装用訓練
幼児の耳に合った耳型をつけ常時装用できるようにする。
ロ、集団補聴器による訓練
増幅された音を聞かせる。
ハ、聴能訓練器による個別指導
聴力型による個別指導をする。
以上のような訓練がなされ、ことばや音の聴取、弁別能力を伸ばすための努力がはらわれております。
3) 個別指導
聴力差・能力差が大きいので個別指導にはじゅうぶん留意し、指導の徹底を図っております。
(3) 教育相談
聴覚障害児に対することばの指導や耳の訓練は、一日でも早い方が効果的であります。
本校では、毎週土曜日、幼稚部入学前の一、二歳児を対象に家庭における補聴器の装用、ことばの指導、生活指導などについての相談や、その実際が行われています。
現在本校分校で一歳児二名、二歳児十一名が教育相談を受けています。
(保護者の感想文)
難聴児を幼稚部に入学させて
三歳児の母
私の子が難聴と診断されたのは、昨年の七月、私の子に限って難聴児であるはずがないと思い続け、それが破れた時の私のとまどいは、何と表現してよいかわからないほどでした。
しかし、子供のためを思えば、悲しんでなどおれません。
幸い近くに聾学校があったので、早速教育相談をうけました。週一回の教育相談のころは、早くから聴能訓練をしたお子さんたちは、上手に音を聞きわけ先生の指示に従ってやるのに、我が子といったら、自分勝手、音の聞きわけ名前の弁別など、何をやらせてもまともにできませんでした。
もっと早く気がついて早期教育をしてやりたかったと、後悔の連続でした。
しかし、我が子も、今年幼稚部三歳児学級に入学し、訓練や、集団によるいろいろの経験を重ねるうち、どうにかお友だちに追いつき、耳をだいぶ使うことに慣れ、私と二語文ぐらいの、やさしい会話が可能になってきました。
ことばで自分の要求がとおった時の子供の顔は、とてもうれしそうです。
性格も、ほがらかになったとみんな