教育福島0013号(1976年(S51)08月)-044page

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福島の文化財

 

県指定重要文化財

旧中畑陣屋主屋

会津若松市東山町大字石山字院内一番地

 

木造平家建て、寄せ棟、茅茸き、玄関唐破風付、間口七間(一三・四メートル)・奥行八、五間(一六・二メートル)、鍵型。

もと西白河郡矢吹町中畑の地にあって、岡崎憲太郎氏の住居に使用されていたものを、同家の解体新築にともない昭和四十九年に現在の所有者が譲渡をうけ、現在地に復元移築したものである。

中畑陣屋は、天保年間旗本松平氏の代官陣屋として創設され、この遺構は天保八年一一八三七)建築されたものとみられるが一別の資料では天保+四年)、明治維新後の廃止とともに、岡崎氏方に屋敷地、付属屋ともども譲渡され、その住居として使用されてきた。

岡崎氏入居にともない、住居向きに順次改造、増築されて今日に至ったが、陣屋史料及び岡崎家記録に図面などの保存があり、今回の移築ついでの原形復帰は支障なく、おこなわれた。但し岡崎家によって、「大手門」「土塀」「米倉」「役宅長屋」その他の付属施設はすべて改廃されていた。なお、旧地の池を含む庭園は後世のものらしい。

陣屋主屋は、簡素ながら床、棚、書院などをはじめ、次の間、玄関式台に至るまで書院造りの形態を示し、二つの座敷の配列などに若干数寄屋風を加味するなど、洗練された屋内をもつ一方さす組、茅茸きや勝手土間部分などには地域農民住居の手法も残している。また保存史料と併せ考えて、当時の地方行政施設の形態やその使われ方も、ほぼ知ることができる。

明治以降旧陣屋の廃却はとくに急がれたらしく、高山陣屋を別とすれば、遺構残存は韮山代官江川家住宅ほか一例が知られるだけである。この遺構は五千石の旗本陣屋としては屋敷も大きかったが、主屋がよく整い、かっ今までもよく保存されてきた。

 

旧中畑陣屋主屋(会津武家屋敷内)

旧中畑陣屋主屋(会津武家屋敷内)

 

 

 


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