教育福島0014号(1976年(S51)09月)-007page
また、各領域は、指導内容を整理するためのものであるから、指導に当たっては、「領域の指導」というよりは「領域に示された内容の指導」に考え方の重点を置くことがたいせつである。
(二) 指導内容の重点化を図るとともに統合的な指導を進める。
(1) 指導内容の統合と重点化
指導内容の統合とは、有機的な関連をもついくつかの内容が、それぞれのねらいをふまえながら、指導目標にしたがって統一的に統合され、生きてはたらく姿になることである。
したがって、それには一つの領域の中での統合、あるいは諸領域にわたっての内容の統合(領域統合とも言われる)が考えられる。
指導内容の重点化とは内容を羅列して、すべて同様な程度に取り扱うことを避け、指導目標に照らして最も重要な内容にしぼり、他の内容は関連的に扱われるよう工夫することである。また、そのためには、児童生徒の学習負担の軽減も考慮される。
ただし、重点化ということは、省略化を意味するものでないことに注意しなければならない。
(2) 統合的指導について
統合ということも、重点化ということも、ともに目標に照らして指導の効率化を図るための措置であり、いろいろな内容が、一つの教材として統合され、その中で目標に照らして最も重要な内容について指導の徹底を図り、他の関連する内容についても注意がはらわれるように工夫することである。
統合的取り扱いというのは、音楽における種々の要素、つまり、リズム・旋律・和声・速度・強弱・音色などと各領域の内容がそれぞれのねらいをふまえながら、指導目標にしたがって統一的に統合され、生きて働く姿になることである。
一つの旋律を美しく表現しようとするとき、リズムや速度、そして強弱や音色など種々の要素は有機的な関連をもちながら、音楽の美しさに向かって統合され、一つの生命体としてのまとまりをもつものにならなければならない。
統合的指導とは、音楽の各要素や領域の内容が、有機的な関連のもとに、ねらいに向かって楽しく確かな学習を進めていくことを意味しているといえよう。
(三) 「基礎」の指導について
(1) 「基礎」の内容
指導要領に示されている「基礎」については、鑑賞・表現(歌唱・器楽・創作)に共通して含まれている基礎的内容をまとめ、学年の発達段階に応じて、発展的・系統的に配列したものである。したがって学習指導要領に示されている「基礎」の内容は、
○ 音楽的感覚に関するもの。
○ 聴取・読譜・記譜の能力及び楽譜についての理解に関するもの。
とされ、それらは従来、各領域に分散されていたものを一括して示したものである。
音楽的感覚は、音楽を構成する要素に関する感覚で「基礎」ではそれを、リズム・旋律・和声の三項に整理して示している。
また、音楽的感覚の中では、鑑賞・表現に共通して含まれる内容として、速度・強弱・音色などの音楽を表現する要素に関するものもあるが、これらは、他の領域の活動の中で、それぞれ密接に関連するものであると同時に、同じ領域の中においても、関連的・統合的に扱うことを忘れてはならない。
聴取・読譜・記譜の能力及び楽譜についての理解に閲するものは、各領域に共通した基礎的能力で、音楽的感覚や、知的理解に裏づけられて指導される内容であり、これらは学習を自主的創造的に進める上にきわめてたいせつなものである。
(2) 「基礎」の指導の取り扱い
1) 「基礎」の内容を抽出して孤立した指導をするようなことを避ける。
2) 聴取・読譜・記譜などの指導は、鑑賞・表現の活動の中で同時的に取り扱うようにする。
3) 「基礎」の学習は、美しい音楽に感動する学習と直結している形で指導を進める。
「基礎」の学習は、ともするとその効率面を強調し、どうしても能力としての陶冶に偏するきらいがでてき易いことに注意しなければならない。
感動的な学習と直結する指導の中から、一つ一つ積み重ねた形で「基礎」の内容が能力化されていくように努める。
4)取りあげようとする教材と「基礎」との内容的な関連を図ることがたいせつである。
「基礎」の学習は、同時的に他の領域の学習になるように、あるいは逆に他の領域の学習が同時的に「基礎」の学習になるように取り扱う。
一方、「基礎」の学習内容は、系統的・発展的に配列されることもたいせつである。
この両者の基本的な考え方をもとにそれにふさわしい教材を選択することがたいせつである。
例えば、和声の指導をする場合を考えてみても、教材によっては和声指導の適、不適があるように、教材と「基礎」の内容的な関連をじゅうぶんに図ることがたいせつである。
5) 児童生徒の実態を的確には握する。
「基礎」の内容は、系統的・発展的な指導によって、無理なく積みあげられ能力化されることが望ましい。そのためには、学習の主体者である児童生徒の興味や能力などをとらえて段階的に発展させる指導を工夫することが重要となる。
二、指導計画の改善充実に努める。
毎時の授業を充実し効果的な指導を