教育福島0014号(1976年(S51)09月)-010page
内容の系統を確かめながら、題材内容の整理をした方がよいか、関連する題材を統合した方がよいか、児童生徒が主体的に表現活動に取り組み、表現力が高まるように留意する必要がある。
▲ 題材の統合を図った例
(小学校3年デザインの題材)
二、豊かな表現をさせるために、特に発想段階の指導を工夫する。
図画工作・美術科の指導では、作品の技術的なできばえよりもそれができあがるまでの児童生徒の心的な過程が中心課題となってくる。絵画では、児童生徒がなにを感じ、なにを心に描いているかが重視されるし、デザインでは紙の切り方や、くぎの打ち方などよりも、新しいアイディア、豊かなイメージの方が重視される。このように発想指導が表現活動を充実させるためには重要なはたらきをしているのである。
発想指導における主な問題点をあげてみると、
・ 児童生徒に発想をさせるためのじゅうぶんな時間が与えられていない場合がある。
・ 学年段階に応じた発想の契機となる手だての工夫が少ない。
などである。発想は内面的な活動であり、児童生徒の一人一人、その速さや豊かさには個人差も大きいので、その点にじゅうぶん留意する必要がある。
これらの発想にはその契機となるものがあり、発想を発展させる条件があり、促すためのふんい気が醸成されていなければならない。特に契機をどう設定するかが大きな手がかりとなるので、参考例をあげてみたい。
※ 「図画工作学習の指導例」文部省著作より一部引用
(一) 主題からの発想
「運動会」という絵の題材が与えられると運動会の経験を想起するし、「緑の週間」というポスターの題材を与えられると緑化に関する問題を考える。その題材からイメージを作り出すとともに学習の方向をとらえるきっかけとなっている。しかし、方向をとらえさせるだけではじゅうぶんでない。発想を促し豊かにするためには、「運動会」における児童の経験が興味、驚き、感動などの心情に裏づけられて想起されるほどそのイメージは明瞭で豊かなものとなる。つまり、一人一人に主題をもたせることで、その児童でないと表現できない独自なモチーフが生まれてこよう。
(二) 色や形からの発想
河原から拾ってきた石ころを見て、子供たちはその中に犬の顔を見出し亀や象の形を想像する。それはなんのへんてつもない石ころであるが、見る人の心にさまざまな映像を植えつける。
このような発想の方法が、デザイン学習などにおいても材料や技法から新しい用途を思いつかせるのには効果的である。
(三) 機能からの発想
「えん筆立てを作ろう」という題材の与え方よりも、「えん筆を立てるものを作ろう」という与え方のほうが、より創造的な活動が期待できるといわれている。「えん筆立て」はものの概念であり、「立てる」は機能の概念である。既製の形から脱却して新しい形を生み出すためには、機能を求める問題を与えることが豊かな発想をさせることにつながるといえる。
デザイン・工作・工芸の指導においては、機能から発想をさせて造形思考を働かせるよう留意する必要がある。