教育福島0014号(1976年(S51)09月)-012page
体育
保健体育
一、体力を高める。
二、運動技能を高める。
三、事故を防止する。
の三つを昭和五十一年度小・中学校共通の指導の重点事項に掲げている。
これらは、学校体育の本質、児童生徒の発達、並びに社会の要請等の現状をふまえたものであるが、過去の指導を反省してみると、あまりにも画一的な練習や、いっせい指導が形式的にくり返されていることが多かったように思われる。このような指導では、総合的な体力づくりや、運動技能の向上を期待することは困難である。
毎時の授業をより充実させるため、一、楽しい授業の展開 二、指導過程の工夫 三、運動技能の向上を中心に、実技の学習指導法の改善を図るための留意点について述べることにする。
一、楽しい授業
楽しいとか、楽しくないとかは、人間の感情の問題である。
人間の行動が現われるのは、主体と環境との相互作用によるといわれているが、感情も広い意味での行動の一つであると考えるならば、楽しい感情行動をひき起こさせるためには、この主体的条件と、環境的条件設定の問題と具体的に取り組まなければならないであろう。
楽しさや、おもしろさがなく児童生徒の活動が不活発な授業になるということは、この二つの条件のどちらかが欠けているか、両方ともふじゅうぶんであるかにかかっているということができる。
これらの問題を打開するためには、児童生徒の発達段階に見合った題材を選定し、指導方法について工夫することが重要である。
指導案をみる限りでは、すばらしい授業が期待できそうなのに、実際には児童生徒が満足しない授業が展開されているということは、一体どうしたことであろうか。題材の選定、その与え方、展開のし方、場面設定のし方等、教師の助言を含めた、広い意味での環境条件の欠如に問題がある場合が多い。
◇ 体育における楽しい授業
楽しい体育の授業を展開する条件として、次の事項を挙げることができる。
(一) 発達段階に見合った題材の選択
(二) 自主性を重んじた指導過程
(三) 環境的条件の整備
(四) 適切な運動量
(五) 運動技能の向上
体育は、身体活動がその中核ではあるが、長時間激しい活動が長く続いたり、反対に、極端に運動量が少なかったり、能力不相応の活動を強要されたりすると児童生徒の意欲は激減する。また、教師の説明が多く児童生徒が活動する場面がじゅうぶんに与えられなかったり、一人一人の技能の向上が自覚されなかったりすると学習の喜びはわかず、意欲もまた目立って失われるものである。
これらの問題に対する解決策として、
・ 自主性を重んじた指導過程
・ 運動技能の向上の二つの事項から考察しその対策について述べることにする。
二、指導過程
T教育委員会の調査資料によると、体育科指導の困難な理由として、「指導過程がわからないから」と返答した教師が、二九%にも達していたと報じているが、見逃せない問題である。
体育好きの児童生徒が、体育科の授業の中でつくられる反面、体育ぎらいもまた体育科の授業でつくられるものである。このことを考えると、体育科の特性に合った、独自の指導過程の工夫が強く要望されなければならない。
ところで、その指導過程であるが、導入の段階でたいせつなことは、児童生徒の一人一人に運動の方法を理解させ、学習に対する見通しをもたせ学習意欲を喚起することである。
そのためには、教師の説明、示範、資料の提示等がたいせつになろう。
次に展開の段階では、友人の演技を見たり、互いに注意し合ったり、教え合ったりしながら、くり返し練習させることになる。そのために教師としては、技能の分析、補助用具の工夫、補助法の指導、練習カードの提示等指導上の工夫が必要になる。また、社会的態度としての協力や、安全に関する態度等についても指導しなければならないので、指導過程の中でもっとも重要な役割をしめる場面である。
また、一通りできるようになったらお互いの技能を見せ合い、批評し合うことも大事である。この時間にできるようになった児童生徒が賞賛され、喜びと強い感動を受けたときの充実感はやがて自信となり、次の運動に対する意欲をかきたてる要因になる。
整理の段階では、学習の成果にまとまりをつけ評価するとともに、さらに発展、応用、工夫するとともに、生活化へと導いていく段階である。
次に、石上秀雄氏の「体育の指導過程」(月刊「楽しい体育指導」6月号)についての考え方を、一資料として紹介してみよう。(左頁の図)
体育科における、指導過程の一例について述べたわけであるが、今後各学校の実状と児童生徒の実態、それに教