教育福島0014号(1976年(S51)09月)-013page
材の種別によって実践研究をし具体的な工夫をすることがたいせつである。特に指導内容を定着させるため、展開の部分に適した時間が配当されているかどうかを検討することも必要である。
このような指導が展開されたときに児童生徒の自主的な活動が、より活発となり、体力や運動能力の向上も期待できるものである。
三、運動技能の向上
学習における児童生徒の直接の目的は、「なんとかして、さか上がりができるようになりたい。」「ドリブルで相手をぬくには、どうすればうまくいくか。」というような欲求となって現われるものである。
この欲求をかなえてやるのが、教師のつとめである。
そのためには、
(一) 教師が、運動技術の要点をじゅうぶん理解していること。
それぞれの運動を支えている中心的な技術は何か、また、その運動を進めるための体力とは何かをはっきりさせておくことが、児童生徒の技能を高めるための出発点となる。
(二) 技能の上達を阻害する一般的条件を、研修や指導の経験から明らかにしておくこと。
(三) 指導法を工夫すること。
児童生徒が理解しやすいように技能指導の手順を具体的に提示するとともに、反復練習をどうさせたらよいか等、指導法について検討すること。
(四) 結果の指摘よりも、原因の究明をすること。
単に現象をとらえて診断するばかりでなく、そのような現象が、なにに起因するかを、具体的に探究することがたいせつである。
(五) 適切な運動量をおさえること。
そのための留意点として、
(1) 題材の種類・内容によって考えること。
(2) 運動の時間、回数等によって考えること。
(3) 児童生徒の発育・能力・意欲等によって考えること。
(4) 教師の教材解釈・指導目標・指導法を的確にしておくこと。
(5) 施設設備・用具を整備し、季節や天候等を考慮すること。
(六) 意欲を喚起する到達目標を設定すること。
児童生徒の学習意欲を喚起するためには、成功の喜びを感じさせることがたいせつである。したがって、児童生徒の能力に応じた到達目標の設定が重要である。
〈例〉バスケットボールのシュート
十回のシュートで、五回成功させようとして六回入った場合と、七回成功させようとして六回入った場合の内的報酬は、異なるものである。
このように考えると、児童生徒の能力、興味、経験等を考慮し、個人差に応じた到達目標の設定がたいせつになる。
(七) 個人差に応ずる指導をすること。
個人差に応ずる指導は、運動の特性や、その運動に対する児童生徒の能力差について分析的には握しておくことが必要である。
〈例〉鉄棒運動(小学校二学年さか上がり)
さか上がりは、「鉄棒を順手又は逆手で握り、片足で踏み切り、他の足を振り上げてさかさになり、腕を曲げて体を鉄棒上に引き上げ、腹部を軸にして後方に回り、体を起こして腕立て懸垂になる」という運動である。