教育福島0014号(1976年(S51)09月)-023page

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学校の教育目標と深い関連をもった道徳教育の目標を、各教科、特別活動などでは、どのような立場で具現していくかという見通しをつける。つまり学校の道徳教育の目標を、各教科・特別活動ではどのように受けとめるかということを考えて、それぞれの教科や領域等における道徳教育のねらいや方針を明らかにしておくことが必要である。

しかし、ここで考えなければならないのは、各教科や領域の指導には、それぞれの目標があり、道徳教育を強調するあまり、各教科や領域のねらいや内容が、道徳教育の成果をあげるといい立場からゆがめられることのないよう留意したい。つまり、各教科、特別活動においては、それぞれの目標に基づき本来のあり方で指導することによって、各教科の目標や内容及び教材や学習活動の中に道徳教育に関するものが含まれており、道徳教育も合わせて行われていると考えるのが妥当であろう。

(三) 学校のおかれているさまざまの条件について、道徳教育の成果をあげていく立場で検討し、全体計画を作成すること。

学校の歴史や校風、地域の人々の学校に対するねがいなどの無形なものから、施設・設備の状況、学級数、職員組織などの有形なものに至るまで、それぞれの学校のおかれている条件は異なっている。ことに、児童生徒の実態においては一段と異なっているものである。

このような、学校のおかれているさまざまな条件を道徳教育の観点からよくは握して全体計画を策定するようにする。

 

二、ねらいの明確化と重点的な指導

 

学習指導要領「道徳」の第3「指導計画の作成と内容の取り扱い」には、「必要とされる内容を重点的に取り上げること」(小・中)と述べている。

従来の道徳指導が、ら列的に内容を取り上げ、断片的・平板的に行われてきたことへの反省から特に力説されていることである。

このことについて、さらに指導書では、

「学校の道徳教育の重点を明らかにし、各学年の指導の重点を明確にすること。」

「各学年の各教科及び特別活動における道徳教育との関連において、特に必要とされる内容については、これを重点的に取り上げ……」

「各学年における重点的な内容を取り上げている主題は、他の内容を取り上げている主題よりその数をふやしたり、配当時間を多くしたりするなどして……」などと述べられている。

したがって、重点的な取り扱いというのは、各学校の地域性、児童生徒の実態、他教科等での指導との関連を考えて、

1) 学校の道徳教育の目標の重点を明らかにする。

2) 学校の教育活動全体との関連において、道徳の時間の重点を明らかにする。

3) 各学年の道徳指導の重点を明らかにする。

4) 各学年の重点的な内容を取り上げている主題は、他の内容を取り上げている主題より多くしたり、時間数を多くしたりしたりする。ということである。

次に、こういう手順で年間指導計画が作成されたならば、学級での指導に当たっては、更に、学級の児童生徒の実態に即応した授業を展開するために指導計画の学級化を図らなければならない。

ア、年間指導計画を学級化するための前提条件としては、充実した年間指導計画が整備されていること、学級の児童生徒の実態が的確には握されていることである。

イ、年間指導計画の学級化の対象となるのは、ア主題のねらい、イ主題配列の時機や配当時数、ウ中心資料、エ展開の大要や指導法の四つである

学級化の許容度や必要度については、一般的には、アは最も許容度が少なく、イウエとなるにつれてその必要度が増してくると考えられる。

ウ、主題のねらいの修正は、学級の実態に応じて手を加えたり、取り上げる資料の変更や生活経験に即して明確にしたり、より具体的にしたりする程度にとどめ、年間指導計画に位置づけられているねらいが姿を消したり、学年の重点まで変更することは望ましくない。

エ、主題配列の時機や配当時数を学級の児童生徒の実態に即して変更修正する場合、特に留意したいことは、必要性の認識が主観的・部分的に陥らないよう注意しなければならない。

オ、取り上げる中心資料を学級の実態に即して変更修正する必要が生じるのは、より大きな効果が期待できる資料が見い出された時や、学級の中に既定の資料を避けなければならない児童生徒が現実にいる場合などである。

以上、主として道徳教育の計画面について述べてきたが、道徳の時間の授業充実とともに指導計画の充実整備についても、この際、学校あげて見直しをし、道徳教育に対する各学校の主体性をよりいっそう明確にしてほしいものである。

なお、道徳の時間の指導の充実については、児童生徒の道徳意識の発達段、階や生活の実態をふまえることと、指導過程や資料の固定化を排除して、生活の中で生きて働く道徳となるよう心掛けるとともに、他領域との関連を強化して、具体的な実践の場を設けるなど今後配慮していかなければならない点である。

 

 


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