教育福島0015号(1976年(S51)10月)-007page

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教科等の指導は、教材価値を追求することにそのねらいがおかれているが生徒指導は、価値追求のための教育活動が効果的に行われるための条件を整えるはたらきである。学習意欲や集団の士気を高めたり、生活の秩序を確立し、学習不適応条件を除去したりすることによって、学習の充実を図っていくことである。したがって、生徒指導は、教育課程の全領域にわたって行われなければならない。

(二) 生徒指導は、正しい生徒理解に立ち、一人一人に即する指導である。

生徒の能力・適性・性格等はすべて同一ではない。生徒指導は、このような生徒の個別的発達や特性を具体的に理解し、一人一人に即する指導を展開することによって、生徒の持つ可能性を開発していくことができるのである。

(三) 生徒指導は、現実の生活に即しながら、具体的、実際的な活動として進められるものである。

児童生徒は、生きた環境とのかかわりの中で生活している。生活現実の中には生徒に好ましい経験や行動のみを与えてくれるものではない。生徒の人格形成にとってマイナスとなるものも少なくない。生徒指導は、こうした現実の問題情況の中から、障害を排除し生徒の持つよさを伸ばしていくための具体的、実際的な活動である。(四) 生徒指導は、すべての生徒を対象とするものである。

児童生徒は、精神的にも身体的にもそれぞれの発達課題を負っている。生徒指導は全生徒の課題を的確にとらえ個々の問題を解決していくための指導を継続的に行っていかなくてはならない。

 

三、生徒指導充実の着眼点

 

生徒指導の充実は、教育活動を効果的に進めるうえで不可欠の問題である。

しかし、生徒指導の重要性は理解されていても、指導の実際場面となると問題も多く残されている現状である。

そこで、生徒指導充実のための着眼点について述べてみよう。

(一) 深い生徒理解のうえに立ち、教師と生徒との信頼関係の確立を図ること。

生徒指導は、生徒理解にはじまって生徒理解に終わることであるといわれている。このように生徒理解がたいせつであるとされながらも、現実にはさまざまな問題がある。知能や学力のみで人間を決定づけたり、親の職業、地位などにとらわれ、先入観を持って児童生徒をとらえたりはしていないであろうか。このような一面的な見方やとらえ方では、一人一人を適切に伸ばすための生徒理解とはいえない。

児童生徒は、異なった能力を持ち、個性的といわれる独自な特徴を持っている。したがって生徒理解は、知的なものだけでなく多様な能力、趣味など生徒の持っているものを、客観的、総合的には握し、個性をよりょく伸ばしていくための方策をみつけ出していかなければならない。

教師が、深い生徒理解に立ち、共感的、受容的態度で指導に当たる時、生徒自らも、胸きんを開いて語り、訴えるようになり、相互理解と信頼に支えられた人間関係が生まれてくるのである。

(二) きびしさを克服できる心を育てること。

現代の児童生徒は、欲望に対する自制、心が不足している。このことは、家庭教育でも、学校教育でも児童生徒を外に向けて解放はしたが、自己の内なる良、心に照らして行動し、自己の欲望を抑制し耐えていく指導は足りなかったことを示しているのではないだろうか。

すべての欲求がなんの抵抗もなく満たされていく環境の中にあっては、節のある人間は育ってこない。自分の英知と努力を傾けて問題を解決していく気力、根性を育て、きびしさに耐えていく生活経験を重ねることによって、自己規制力も身についてくるものである。

(三) 勇気づける指導を継続的に行うこと。

一人一人の児童生徒が学習の目標をは握し、生きる意味を自覚した時に、生活を充実させ創造していく、気力と意欲がわいてくるものである。

「やる気」は、自分の考えが生かされ、所属集団の中で認められた喜びと問題を解決した成就の感動から生まれてくるものといわれている。

児童生徒は、豊かな個性を持っているものであるから、教師は常に、学習行動面における観察を鋭くし、つまずきには温かい指導助言を、成功には賞賛を与、え、内発的動機を活発にするための勇気づけの指導を多くしていくことがたいせつである。

児童生徒にとって、所属集団から承認されることが、次の飛躍のバネにつながっていくものであることを忘れてはならない。

四 豊かな心情と望ましい習慣形成の確立を図ること。

功利主義、利己主義の風潮がはびこり、人間の心の美しさが見失われがちな昨今である。

生徒指導は、人間的なふれあいを通して、豊かな心と協力関係に支えられた連帯感を育てていく教育でなければならない。そのためには、教科、特別活動、課外クラブ活動のすべてを通して感動体験を多く与え、協力して活動することの楽しさを感得させていくことが必要である。生徒相互の協力とみかきあいによって、独善と排他、利己と偽善は捨て去られていくのである。

また、学校生活を秩序あるものにしていくためには、生活習慣を身につけさせ、基本的な生活のルールを守っていくことのたいせつさを指導していくことが必要である。

生徒指導は、教師自らが、生徒の中に溶けこんで問題をつかみ、生徒のよき理解者、援助者となって、ともに歩

 

 

 


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