教育福島0015号(1976年(S51)10月)-008page
み、ともに伸びていく態度で接する時その充実が期待されるのである。同時にまた、各学校におけるこうした意欲的な教師相互の共通理解のうえに立った協力体制の確立が望まれるのである。
教科指導における生徒指導
一、教科指導と生徒指導の関係
「きょうは○○をやります。」という教師の一方的な押しつけによる導入や児童生徒のさまざまな動きなどをいっさい無視した学習内容の説明と板書の連続、このような授業には知識の伝達はあっても、真の教科指導も生徒指導もないと言えよう。
教科には、それぞれ教科としての独自の目標があり、その目標達成のための教科指導が行われるが、その教科指導を直接助ける生徒指導がある。また逆に、教科指導がよりよく推進されることによって、生徒指導の本来の目的が達成されることになる。
このようなことから、教科指導と生徒指導を互いに交流させ、補充し合わせながら相互補足的な関係を保った学習指導を行うことによって、はじめて学校教育がねらっている人間性豊かな児童生徒の育成が期待されるのである。
二、学習への意欲を持たせる指導
授業に臨む前に、事前研究としての児童生徒の実態は握、教材研究等の重要なことは論ずるまでもないが、これと並行して、学習への意欲づけを図ることも欠かすことができないものである。
学習意欲を引き起こさせる方法としては、一般に、
○ 児童生徒の興味・欲求に訴えること。
○ 成功感に訴えること。
○ 学習目標をよく理解させること。
○ 適切な賞罰を与えること。などがあげられている。
この中で、学習目標をよく理解させることは特に重要である。学習目標が教師の学習指導目標としてのみにとどまっている場合が多いが、これを児童生徒の学習目標まで掘り下げて指導することによって、学習目的を理解させる。
また、その学習の発展系列をとらえさせることによって、学習の必要感を自覚させ、自己実現の意欲に燃えて学習の目的感と必要感の両面から、積極的に学習に取り組ませる手だてを講ずることがたいせつである。
三、望ましい学習習慣形成の指導
児童生徒が学習に対して受身の態度であっては、学習の効率を高めることは望み得ない、そのために児童生徒が主体的で積極的に学習に立ち向かう習慣の形成がたいせつなのである。
望ましい学習習慣の形成の手だてとしていくつか考えられるが、教科指導の中では、次の二点は重要である。
○ 児童生徒自身を自ら学ぶものへと
変容させるようにすること。
○ 児童生徒が自主的に考える教科指導をたいせつにすること。更に、望ましい学習習慣の形成として、家庭学習に関連した指導もたいせつなものである。A中学校では、家庭学習を次のような全職員の共通理解のもとに指導している。
○ 学校で示した家庭学習の時間の目安に迫るようにする。
○ 明日の学習事項を明らかにし、予習を必ずやり通すようにする。
○ 知的学習や作業学習への重点のおき方、また、それに要する時間などをうまくあんばいして、能率的に実施できるよう計画する。
○ テレビは計画を持って見る。
○ 実施後の自己反省を厳しくする。このような指導に生徒たちは、
○ 帰ってからなにを勉強すればよいかがわかっているので、すぐ勉強にとりかかれる。
○ 計画した分は終えようという欲が出てきて、勉強時間が長くなった。
○ 計画的に自主学習ができるようになった。
○ 家庭での勉強が安定してきた。
○ 学習のしかたがわかってきた。という反省をしている。
このように、教師の家庭学習に対する指導の役割は大きいものがある。
四、学習不適応についての指導
児童生徒の中には、「どうせ、ぼくは頭が悪いんだ」と最初からあきらめて学習に臨んでいるもの、引っ込み思案でわかろうと努力しない無気力なもの全く無口なもの、周囲の動きに気をとられる注意力散漫なもの、非社会的な傾向にあるもの、又は急に成績が下がってしまったという児童生徒は必ずいるものである。このような児童生徒を「だめな子供」という見方でなくて、なんらかの教育的措置を講ずることによって、教科に関心を持たせたり、学習に意欲を持たせたりすることができるという可能性を信じて努力することが、生徒指導では大事である。
学習不適応の傾向に陥る児童生徒には多くの複雑な原因が考えられる。その児童生徒の持つ能力的なものや性格的なもの、更には、児童生徒を取り巻く環境、なかでも家庭環境上の要因が大きな原因になっている場合が多い。そこで、これらの児童生徒を、心理状態、性格、知能、家庭環境、授業時の態度遊び等、多様な角度からの観察、調査により多面的に児童生徒を理解す