教育福島0015号(1976年(S51)10月)-010page
(一) すべての児童生徒が集団の中で、不満や不適応感をもつことなく、それぞれの能力や特性を発揮しうるような役割を与えること。
(二) 集団としてのまとまりを欠きやすいような児童生徒を早く発見し、個人的な指導をすること。
(三) 常に集団内での人間関係の調整を図ること。
(四) すでにできている集団の特徴を尊重すること。
(五) 連帯意識を高めるような機会を多くもつこと。
三、集団場面での教師の役割について
(一) 児童生徒の個性をじゅうぶんに理解すること。
集団指導は集団を構成する一人一人の個性の理解から出発する。
(二) 集団場面において、個性を生かすようにすること。
集団場面における生徒指導は、集団を一つのまとまりとして画一的に指導することではなく、個々の児童生徒がよくなれば集団もよくなるという発想が基本にあるので、生徒一人一人の個性に注目し、個人差に応じた指導を行うように努める。
(三) 集団を理解する方法に精通すること。
科学的な方法(ソシオメトリーなど)と直観的な方法(教師による観察)とが相補いあって、両者の限界や欠陥をうずめ、より望ましい結果が得られるようにする。
(四) 児童生徒の自主性を生かすようにすること。
この場合に教師の指導性と児童生徒の自主性の両者の調和をどのように図るかということが問題となるが、児童生徒はまだ、その判断力が未熟でありまたその基礎となる知識もじゅうぶんとはいえない。したがって、児童生徒の発達段階に応じて指導が加えられなければならない。
(五) 集団活動の場面に応じて役割を変えるようにすること。
教師は、場面に応じて、集団に対する役割を変えるという柔軟な態度をもち、その場面に最もふさわしい指導を行うよう種々の方法について習熟しているとともに、その取り扱いについて融通性を持っていることが重要である。
四、集団場面における生徒指導上の留意点
(一) 集団維持の機能が満たされるようにすること。
(二) 集団の成員のすべてが、和やかに自由に自己を表現できるようにすること。
(三) 話し合いにおいては、必ずしも、成員の意見をまとめたり、議決したりする必要がないことを知っておくこと。
異なる考えや意見をむりにまとめて議決したりするよりも、自己を正しく直視させる方向へと指導したほうが望ましいことかある。
(四) 集団の活動において、それぞれの成員がその能力・適性・興味などに適した役割を分担するようにすること。
(五) 集団における話し合いや活動の内容は、できるだけ成員の要求や興味実態などに適合したものであること。
(六) 集団のリーダーの役割は、固定せずに交互に行わせることにより、できるだけすべての成員にリーダーとフォロワーの経験を与えるように配慮すること。
五、集団場面における生徒指導の評価の観点
集団場面における生徒指導がどのような効果をもち、集団全体がどのように変化したかを測定し、評価する方法としては、観察法・質問紙法(ソシオメトリー・ゲスフーテストなどを含む)・評定尺度や標準検査による方法などがある。
しかし、これらの方法は、網ら的にあるいは場当たり的に行ってみても集団指導の効果を評価することはできないであろう。
重要なことは、集団場面における生徒指導の目標を分析し、評価の観点が明確にされることである。
集団場面における生徒指導の一般的効果を評価するための観点について述べる。
(一) 集団活動への児童生徒の参加が積極的になったか。
積極的になった事実や、依然として消極的である事実の観察事項を教師が評定することによって評価される。
(二) 集団への所属感が強くなったか。
集団への所属感は、個々の児童生徒や集団の動きを観察したり、学級における生徒の発言を分析したり、質問紙等で所属集団を表現させることなどでとらえることができよう。
(三) 集団のふんい気が集団中心的であるか。
集団場面における生徒指導の一つのねらいは、集団のふんい気が自己中心的でなく、集団中心的になることである。これらは観察法でもとらえることができるし、評定尺度法で数量化もできよう。
(四) 集団の組織化がうまくいっており活動が自主的で活発であるか。
(五) 集団内の生徒の心理的結合が強化されたか。
心理的結合は、集団における活動場面において、成員の間の相互作用を観察することによって評価される。
以上、集団場面における生徒指導について述べてきたが、児童生徒の豊かな人格は集団の中で形成され、また育成されていくのであって、集団の高まりは個を高めるものとして、集団指導は重要だが、それと同時に集団の構成員である一人一人をどう集団の中で自己