教育福島0015号(1976年(S51)10月)-011page

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実現を図らせていくかということの生徒指導を忘れてはならないことである。

 

教育相談活動の充実

 

一、学校における教育相談の進め方

 

(一) 学校における教育相談の意味

教育相談とは、厳密には、「依頼者からの訴えに応じて、児童生徒が社会的情緒的・身体的な障害をもち、学習能力や生活行動に異常があるとき、。パーソナリティの形成が健全に行われるように専門的立場(教育学的・心理学的精神衛生的・医学的など)から診断・治療のための助言・指導をあたえること」(教育社会学辞典)を意味する。そして、このような教育相談は、従来、主として、専門的な機関において、専門家によって実践されてきた。しかし今日のごとく、問題をもつ生徒が急増している状況では、専門家だけでは手がまわらないし、同時に問題をもつ生徒たちの予防や積極的な精神の健康増進を考慮しなければ、もはや現代の教育は前進しえなくなってきたといえる。このようなことから、学校教育、特に生徒指導の領域において教育相談を推進することの必要性が一段と高まってきている。

この、学校の教育活動の一環として実施する教育相談については、「生徒指導の手びき・第一集」(文部省)では次のように述べている。「教育相談とは、本来、一人一人の教育上の諸問題について、本人またはその親、教師などにその望ましいあり方について助言・指導することを意味する」更に、「いいかえれば、個人のもつ悩みや困難を解決してやることにより、その生活によく適応させ、人格成長へ援助を図ろうとするものである」と。まさにこのことは生徒指導のねらいそのものである。生徒指導にはいろいろのやり方があるが、その中で、教育相談は最も本質的で、重要な領域を占めるものであるといえる。

(二) 教育相談の体制と方法

以上のことから、学校における教育相談は、特定の教師や生徒指導主事などが専門的に行う教育活動であるだけでなく、学校内のすべての教師が、共通理解のもと、一致協力して取り組み進めていかなければならない教育活動といえる。そこで、まず、学校全体として取り組める相談の体制を、どのように確立するかが先決となる。もちろん、学校教育相談の基礎的な仕事は、各学級、各学科の担当教師が担当するのは当然だが、校長、教頭などの管理職にあるものも相談活動の運営面で、責任をもたざるを得ないし、更に係が組織されることも必要であろう。例えば、その調整役として、あるいはサービスセンター的存在としての教育相談係などである。このようなしくみの中で、担任と担任、担任と係とがたえず連けいしあい、共通の目的のもとに、共通の理解をもって進めるべきであろう。さらに、教育相談係は各種の資料を整えたり、担任の指導や相談に適切な助言指導をあたえるほか、直接指導に当たるといった活動があろう。また担任もすすんで、問題をうちあけ、明解な助言指導を受けるといった心がけがほしいものである。とにかく、教育相談を推進する体制が、学校内の分掌組織の中に正しく位置づけられ、学年会、分掌各部会職員会などとの有機的な連けいを保って活動することによってはじめて、教育相談の成果が期待されるものである。

次に、教育相談の方法としては、大別して判定(診断)的方法と処置(治療)的な方法とがある。判定とは、問題の原因やその形成の過程を明らかにすること(生徒指導の手びき)でありそのための具体的な方法としては、心理テストや面接、行動観察などがある。処置とは、それによって問題の解決を図ることである。処置の方法はおそらく次のような種類になるであろう。

(イ)紹介、依託 (ロ)助言打ち切り (ハ)継続、面接

(三) 教育相談における情報・資料のシステム化

教育相談に関するさまざまな情報・資料を収集し、これらの資料にもとづいて教育相談を効果的に進めていくことも重要な課題である。しかし、必要な資料は多種多様であり、そのすべてというわけにはいかない。むしろ、現在ある資料−生育歴や生活環境・各種の心理検査・各種の調査の結果・観察などの資料−をじゅうぶんに分析することから出発し、補充していくようにすることがたいせつである。したがって、指導上活用するねらいも持たずに種々の検査や調査を行うようなことはさけるべきである。

更に、教育相談を進めるに当たっての、最も合理的な体制は、教育相談室にこれらの情報・資料を適切に集中管理し、各教師が必要に応じてこれらを活用するしくみである。いわゆる教育相談に関する情報・資料もシステム化されることである。

(四) 教育相談の限界と専門機関などとの連絡

教育相談を学校で実施する場合、当然一定の限界(対象としての限界、方法としての限界、問題の程度による限界、相談教師としての限界など)がある。学校における教育相談の特色が、反面、限界となっているといえる。特に、教師は教科などの教育については専門家であっても、教育相談に関しては必ずしもそうとはいえない。また自信過剰や生兵法による処置の危険はい

 

 

 


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