教育福島0015号(1976年(S51)10月)-016page

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して問題行動に追いやってしまうのではないだろうか。この点に眼を向けなければならないと思う。

これらの水面の下にあるストレスを解消してやること。もっと積極的にいえば、あまり周囲の人が気がつかない発生以前に、解消してやることに見方を変えるならば、本人の種々の事情や気持ちがわかってる。この生徒はまわりからの圧力によって、追いつめられた被害者だという見方に、変わって行くのではないだろうか。

問題行動を、学校として処分することは当然であっても、治療的な見方で考え、対策方針を進めて行こうとすればどうしても問題行動が生みだされてくる底にあるものへの指導を考える必要がある。

そのために、生徒を指導し、説得しようとする時、常に"生徒はどう感じているか"について敏感でなくてはならないと思う。

このように、客観的に理解する生徒理解の考え方、そして水面の下の氷を作らない指導、氷を溶かす指導の基礎となるものが教育相談であると思われる。

本校でも生徒指導の基礎として、教育相談を昭和五十年度より取り入れることにして、教育相談係を新設し、その第一歩として、年間計画を作り、計画的に進めることになった。

検査・(STテスト、AAI、YG)調査(悩み、被害)を実施し、正常と思われる生徒の氷が大きくならないように、悩みや問題の解決のきっかけとして、六月、十月の二回、全学年を対象として一人五分間面接の「面接旬間」を実施している。その時間を生みだすために短縮授業を行っている。

その旬間の前に外部講師を迎え、教育相談の進め方について研修会を行い面接旬間が終了したときに学年会で反省し、その進め方の改善を行っている。

このような定期的面接の、たったの五分間のなかで“この五分間はあなたの時間です、なんでもよいから話をして下さい”の言葉から、子供のときの思い出、友人とのつき合い、親とのTVチャンネル争い、家庭の不和等の話し合いがなされていく。このような人間関係の中から、生徒一人一人の身になって考える姿勢が身について行くと思われる。その過程の中から発想の転換が生まれるのではないかと考え、期待している。

それが発展して、生徒、父兄との話し合いの機会を生みだす原動力となり学校における係活動の活発化、グループ活動の中での相互作用を期待し、生徒の日記、感想文、自叙伝の中から、生徒の人間を理解し、教師が、自己の人間観、教育観について開眼し、態度が変容して行く。

本校の、実践力のある教師が、共通理解をもって生徒指導の巨大な壁に対する発想を転換して、教育相談に立ち向かうことの日が近いことを、確信している。

 

◆教育相談を生かした進路指導

−進路相談のあり方をめぐって−

福島県立福島高等学校

三浦賢一

 

(一) 進路指導と教育相談とのかかわり

教師と生徒の出会いそのものが教育相談の始まりであり、進路の決定がその終着駅であると考える時、教師の人間性の豊かさと広さ、生徒が教師に寄せる信頼感のたしかさは欠かせないものと思われる。進路は最終的には本人の責任の上において決定されるべきものではあるが、教師のひとことが、生徒の一生を方向づけた経験を持つ者は誰しもその責任の重大性を痛感し、進路相談を真しに受けとめざるを得ない。

さて生徒が抱いている将来への希望や興味と、その適性をどのように伸ばし、自己実現への能力を引き出してやるかが進路指導であるとするならば、進路選択の能力を育成し、人生の生き方や職業観について考えさせることは当然である。その際、教科指導と異なって生徒の主体性を重んずるために”生徒に教える”ということから”生徒といっしょに考える”という発想の転換が必要であろう。

ところで進路指導と教育相談は、その教育方法において相互に深い重なりがあり、その違いを述べることは難しいが、あえてその特性の上から分けて考えれば、進路指導ではよりすぐれた能力・適性の理解と伸長、そして前述のように自己実現への探究という開発的指導が中心となる。教育相談では生徒理解において、生徒の内面的理解を重んじ、治療的指導を導入しての生徒の悩みや、問題に対する助言、生徒の情緒面での理解の深化と考えてよいかと思う。進路指導を効果的に進めるためにも、このような教育相談的な取り組み方は役立つものと思われる。

(二) 進路相談の進め方

学校全体が教育相談的に教育活動を行うためには、教育相談にみられる受容と共感的態度と、その技術を取り入れることがたいせつであろう。生徒とよく"ふれあい"生徒の話に耳を傾け生徒の立場に立って進路指導は進められるべきである。その実践に当たっては個人理解から進路選択までの指導過程が体系化され、その中に数多くのきめ細かな資料に基づいての進路相談が位置づけられることが望ましい。これらを進めるに当たっては教師相互の共通理解と協力体制のもとで検討されなければならないし、一方では保護者に対する生徒理解と進路指導の理解を深めることも忘れてはならない。特に保護者会は中心の話題が学力・適性になりがちであるが、生活上、健康上のことも取り上げ、「学習生活設計」全般にわたるように留意し、保護者会が生徒と保護者と教師の三者相談のバネになるように配慮したいものである。

次に現在関係している学年について見た場合、三年間のおおよその進路相

 

 

 


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