教育福島0015号(1976年(S51)10月)-018page
きれないのではないか。多くのことを学び、経験し、思索を深めていくうちに、これまで知らなかった新しい興味も出てくることだろう。反対にあるできごとがそれまでの興味を失わせることもある。十五歳−二十歳ぐらいまで興味の動揺や発達には次のことが関係するといわれている。
(ア)本人の利益、不利益と結びつきがある。
(イ)ほめられたり、けなされたり、愉快不愉快が興味の増加や減少になる。
(ウ)ある特定の知識、理解が増進すると興味がその方向へ促進される。
(エ)嫌いでも長期間にわたって慣れさせられるとあまり嫌いでなくなる。
(オ)すぐれた模範や人物、社会の評価などに感銘するとその方向へ興味が促進される。
二十五歳すぎると動揺期から安定期に入るといわれる。そこでは自分の選択した進路や適応能力について肯定し興味の満足を求める方向に積極性を示すようになる。つまり「自分はこの職業で満足していこう」ということになるのであろう。自分に興味をもてる進路そして将来もその興味を持続できそうだと思える進路を考えさせたい。
(2)性格に合った進路と適性を考えよう
自分の持ち味、適性を生かした仕事は能率も上がるし効果も大きい。適性とは個人の性格や能力がある仕事に向いているかどうかということである。
自分の性格については、自分では主観的になりすぎることがあるので、周囲の意見も聞いて客観的に判断するように心がけさせたい。自分の性格は環境や修養によって変化するものであるから、欠点を意識しすぎることはマイナスで、自分でわかっている欠点なら将来なおしつづける努力をする意欲をもつようにする。どの大人も、自分の適性が現在の職業に一致しているとも限らない。少々のくいちがいはあってもなんとか仕事に対して自分を適応させている。このような適応に対する能力と意欲を養うことが必要と思う。
(3) 能力・学力を考えよう
何々ができる能力という言い方はわかりやすいが、能力ということはどう考えたらよいか。「ある行為を遂行することが実際にできる。また現在以上の訓練を加えなくとも、できるであろうと予見される可能性も含む」−このような意味で考えたらよいと思う。そこで進路選択に当たってどんな能力が要求されるかと考えるとき、知的能力(学力)のほか忍耐力、体力なども当然入ってくる。それらの能力は学習によって得られるものであることは言うまでもない。つまり努力をともなってできあがるものである。「素質はありそうだが学力はよくない」1このようなケースが多い。素質はいわば天性とこれまでの学習の結果であり、素質があるということは学習できる力があるということになる。学力がないのは他の能力と同じようにこのための学習が足りないことである。数多くの試験があり、それらの結果によって自信を強くしたり喪失したりするのが事実である。点数化された試験結果は、その時点での学力を示している。着実に自分なりの努力を積み重ねたい。学力結果を無視して、いたずらに高望みして浪人をくり返すことはよほどの精神力がないとだめである。学カテストはこれに’よって自分の一生が決められるのだという大形に考えてはいけない。自分の学力を高めていくためのバロメーターであると考えさせたい。
(4) 身体的条件を考えよう
人それぞれに体質や特徴があるからいたずらに自信過剰でも困るし悲観することもよくない。進路での身体的条件は職業との関係における条件で、自分の体力の増強に努め身体的条件をよく知っておきたい。
(5) 家庭事情を考えよう
家族は自分になにを期待しているか自分の進路についての考えと両親などとの考えの一致をみつけておく。また家庭の経済的条件は考えなければならないのでよく相談しなければならない。
進路相談に当たって具体的ケースはいろいろあるが、基本姿勢を述べるために一般的事項をあげるにとどめたいと思う。
“進路指導は個別指導に始まって個別指導に終わる”と言われている。このことに思い当たるとき、私たちは教育相談的アプローチについて研究を深め真の意味での進路指導を図ることの必要性を痛感するのである。
生徒指導の研究紹介
◆ あたたかい人間関係を育てるための生徒指導はどのようにしたらよいか
棚倉町立棚倉中学校
(昭和四十九・五十年度文部省・福島県教育委員会指定)
一、研究主題の設定に当たって
生徒の実態は、自主性・積極性という面で劣っており、諸調査、検査、観察の結果から考察しても、わからないことを自分から進んで問題解決に当たろうとする積極的な態度が見られない。
また、中学生の心理的発達の特性から考えると、自己の言動はまわりの友人に左右されることが多く、教師や目上の人の指示よりも友人関係をたいせつにする傾向がみられる。
このようなことから、生徒相互の人間関係及び生徒と教師の人間関係を好ましいものに育てていく必要があり、人間的なふれあいをたいせつにし、気がねなくなんでも話し合える人間関係を確立することによって、学校生活や