教育福島0015号(1976年(S51)10月)-040page

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図書館コーナー

 

本との出合い ゆたかな時間

読書週間を迎えるに当たって

 

恒例の秋の「読書週間」は、ことしも十月二十七日から十一月九日まで(文化の日を中心に二週間)とされ、全国的に多彩な運動が展開されます。

昭和二十二年秋、敗戦により荒廃した国土と、混乱した世相のなかに、新しい日本の指標として、文化国家の建設が強調され、それを受けて出版界と図書館界が手を結んで、戦後の国民の精神的な渇望を満たすため、読書普及の役割を担って実施されました。

この年は「旋風二十年」「愛情は降る星のごとく」「凱旋門」などがベストセラーとなり、ラジオ放送「鐘の鳴る丘」が大流行しました。また、岩波書店の「西田幾多郎全集」や岩波文庫を買うために、学生や復員兵が発売の前日から書店のまわりで列をなし、徹夜で争って買い求めたということもありました。

ちなみに、第一回読書週間の標語は「楽しく読んで明るく生きよう」で、当時の世相がしのばれます。

それから三十年、週間にちなんだ諸行事は年ごとに発展をつづけ、秋の国民的行事として広く知られるようになりました。そして、ことしは第三十回を迎えます。

ことしの標語は「本との出会いゆたかな時間」です。わたしたちは、数年前まで高度経済成長の波にのって、物質的な豊かさを満たすため、ひたすらに忙しくあわただしい生活を送りました。しかし、不況を迎えた今日、これからの社会情勢はどうなっていくのかいささかの不安を感じます。そうした不安な心にふと浮かぶのはやりきれない絶望感、疎外感、空虚です。

いままではなんとなく見過ごしてきたいろいろな事の本当の姿をしっかりと見きわめ、またがっては持っていながら失ってしまったものを取りもどすにはどうしたらよいでしょう。一人静かに読んで、そして考えるとき、そこに心ゆたかな充実、た時間が訪れるでしょう。

さて、具体的な読書週間行事として、は、中央ではいくつか設定されていますが、本県では二つの運動を取り上げて促進することにしました。

一つは、読書グループの結成促進運動です。県内には母親グループ、職場グループなど、県立図書館が直接に貸し出しているグループだけで約三百五十グループを数えます。その他市立図書館・公民館でのグループをあわせますと、五百以上にのぼります。

読書グループは、同好の士が集まってつくる任意のグループですが、その形態はまちまちです。古典文学に取り組むグループもあれば、ベストセラーを楽しむグループもあります。

読書とは個の作業といわれますが、読書への導入や読書の深まりという点で、集団読書は効果的です。読書週間を契機に代表者懇談会や講演会を開くなど、既設グループの育成と強化を図りましょう。また、新しいグループをつくり育てる運動をすすめましょう。

二つ目は、地域文庫、家庭文庫の充実運動です。公共図書館の指標として「いつでもどこでもだれでも」ということがいわれていますが、それには人々の身近に沢山の公共図書館があって初めて達成されるものです。しかし、現実はそういう状況にありませんから全国的に地域文庫、家庭文庫の発生を促し、活発な活動を続けています。本県にも確認されているものだけでも三十数か所があり、それぞれに地域の児童に対して、すぐれた児童図書をそろえ、読書の楽しみを与えるとともに、青少年の健全な育成にも大きく役立っています。

そのいくつかは、本誌に二回にわたって紹介しましたが、文庫活動はまったく個人の善意の奉仕によって、維持され運営されているために、運営上困難な面が多く、とくに児童図書の絶対的な不足に悩んでいます。文庫活動をより充実した形で発展させるために、地域の図書館・公民館の援助が期待されています。

その他、週間にちなんだ「読書研究会」、「読書のつどい」、「図書展示会」「読書感想文・感想画コンクール」「利用者との懇談会」など、地域の実情に即して実施してください。

 

'76読書週間ポスター

'76読書週間ポスター

十月二十七日〜十一月九日

主催 読書推進運動協議会

 

 

 


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