教育福島0017号(1976年(S51)12月)-015page
で百種の収録採譜の計画を立て、県当局に陳青した。多くのかたがたの力添、えもあって、昭和四十九年度の当初予算に、文化庁からの補助二十五万円を加えて五十万円の調査費が認められ、やはり本連盟が委託を受けて民俗芸能に関する調査を開始した。次年度も同額が認められ、この二年間に収録採譜した民俗芸能は、次の七十種である。
出雲流神楽 六(田出宇賀神社の太々神楽、上三宮の太々神楽、白河鹿島神社の太々神楽、柳橋の太々神楽、大倉の太々神楽、赤井の大和舞)
獅子神楽 三(桙衝神社の太鼓獅子、南柚木の神楽、江垂の神楽)
田遊び 一(広瀬熊野神社の御田植)
田植踊り 十八(佐市川の早乙女踊り、鈴石の田植踊り、大久保の田植踊り、蕨平の田植踊り、深谷の田植踊り、上栃窪の田植踊り、南津島の田植踊り、請戸の田植踊り、本揃の田植踊り、山口の早乙女踊り、宮床の早乙女踊り、鴇巣の早乙女踊り、界の早乙女踊り、小林の早乙女踊り、新館の早乙女踊り、北海老の田植踊り、伊丹沢の田植踊り、多田野の鍬柄舞田植踊り)
平鍬踊り 三(古寺山自奉楽、母畑の白鍬踊り、竜崎の平鍬踊り)
田植神事 二(伊佐須美神社の催馬楽、慶徳稲荷神社の御田植)
田楽 一(御宝殿熊野神社の田楽)
獅子舞 二十四(長折の三匹獅子川内の獅子舞、茂原の獅子舞、熊川の獅子舞、滝尻の棒ささら、高野の獅子舞、小野大倉獅子、苅宿の鹿舞、柳橋の獅子舞、大波の獅子舞、川前の愛宕獅子、除石の獅子舞、山木屋の獅子舞今泉の三匹獅子、下大石の獅子舞、新田内の十一匹獅子、西勝の彼岸獅子、赤枝の彼岸獅子、西郷獅子、高田島獅子、下高久の獅子舞、高坂の獅子舞、比曽の三匹獅子舞、下柴の彼岸獅子)
念仏踊り 五(須釜の念仏踊り、関辺の天道念仏踊り、上羽太の天道念仏踊り、会津大念仏踊り、じゃんがら念仏踊り)
七福神・宝財踊りなど 三(鈴石の七福神、霊山神社の濫觴武楽、江垂の宝財踊り)
祭礼磯子 二(猪苗代の祭囃子、二本松の祭囃子)
舞楽 一(磐梯神社の巫女舞)
その他 一(大内の綾踊り)
いずれも学術的価値が高く、しかも保存上緊急を要するものである。最終年度の今年度は、次の三十種を収録している。
(1) 黒沼神社の十二神楽(福島市)
(2)鈴石の太々神楽(二本松市)
(3)白岩の太々神楽(白沢村)
(4)西新殿の太々神楽(岩代町)
(5)福田の十二神楽(新地町)
(6)八槻の七座の神楽(棚倉町)
(7)原瀬の長獅子(二本松市)
(8)南柚木の大蛇舞(鹿島町)
(9)室原の田植踊り(浪江町)
(10)沢上の田植踊り(浪江町)
(11)塩崎の田植踊り(鹿島町)
(12)山下の田植踊り(鹿島町)
(13)雫の田植踊り(原町市)
(14)村上の田植踊り(小高町)
(15)入木沢の田植踊り(飯舘村)
(16)松塚の田植踊り(飯舘村)
(17)田子屋の獅子舞(大越町)
(18)入の作の獅子舞(大越町)
(19)岩井沢の獅子舞(都路村)
(20)石沢の獅子舞(船弓町)
(21)天寧の彼岸獅子(会津若松市)
(22)小松の彼岸獅子(会津若松市)
(23)西久保の彼岸獅子(猪苗代町)
(24)栗生沢の獅子舞(会津田島町)
(25)高野の獅子舞(会津田島町)
(26)高瀬の鹿舞(浪江町)
(27)白水の獅子舞(いわき市)
(28)白河歌念仏踊り(白河市)
(29)鈴掛神社の濫膓神楽(霊山町)
(30)塩崎の七福神(白沢村)
今後はこれらの膨大かつ貴重な資料の取り扱いにかかっている。これほどの経費と労力を費やしたものであるだけに死蔵してよいはずはなく、当然出版して広く活用されなければならない。ことに今回の文部大臣の諮問による教育課程審議会の「審議のまとめ」によると、小中高校をとおして民俗音楽の指導がより強化されるようになっただけでなく、各地方に伝承されている、いわゆる身のまわりのものからも選択するように改められた。すなわち小学校では「歌唱共通教材の曲目は、現行の選択の範囲に加えて、広い地域にわたって親しまれているわらべ歌などからもも選択するようにし……」とあり、中学校では「日本の民謡についてはそれぞれの地方における民謡の中から教材として適切なものを適宜選択して指導できるようにし……」と改められた。高等学校も中学校と同様の観点に立っている。したがって、この民俗音楽収集事業は実に時宜にかなった事業であったといえるし、これらの資料が公刊されれば、福島県の音楽教育への寄与は計り知れないものがあると信ずる。緊縮財政の折りではあるが、県教育委員会は新教育課程の移行措置に入る二三年以内に、この事情を認識し、出版のために特段の配慮をしていく必要がある。
本連盟はまた、これらの素材を基に新しい音楽を再創造し、歌い広めたい。そこまでいってこの事業もひとつの区切りといえるものと思う。
(福島羅鑑査委員会事務局)
埋蔵文化財保護・調査の現況
日本列島の改造は、石油ショックを契機として停滞しているかにみえるが開発は各種の面から進められており、これと関連して埋蔵文化財保護の面で多くの問題を提起している。