教育福島0017号(1976年(S51)12月)-016page
図4は、全国の発掘届件数の推移を示したものであるが、昭和四十六年度以降、年間三百〜五百件前後の伸びを示しており、緊急発掘調査がいかに増大しつつあるかをよく表わしている。
図4 埋蔵文化財発掘調査届出等件数推移図
ところで本県内の状況をみると、今年四月以降の発掘の件数は、現在計画中のものを含め四十一件があげられる。この件数は前年に比し増加を示しているが、年間四十件の数字はすでに昭和四十八年にこえており、それ以降四十件を上下しており、長期的には件数は横ばい状態といえる。
しかし、調査の内容を検討してみると長期にわたる調査が多くなり、これにしたがい発掘調査費も大きくのび今年度の調査費は県内総額では一億五百万円程度と予想され、内容的には大きく変化しつつあることを示している。文化財保護が徹底し、発掘件数が横ばい状況にあるというのではなく、むしろ膨大な調査を消化する機能がなく、調査件数が伸び悩んでいるという感じが強い。
今年度の本県内発掘調査の原因別内訳は、次のようになっている(一部、今年度調査計画中のものも含む)。
東北新幹線関係 五
農業開発関係 十七
農業開発関係(個人) 二
道路建設 一
土石採取 五
宅地造成 二
市町村史調査 一
保存調査 四
その他 四
計 四十一
原因別の内容をみると、県営ほ場整備等の農業関係が最多数を占めている。一方、保存調査とした四件も本年度の特色である。これは、史跡指定調査の関和久遺跡(県)、重要遺跡保存のための二本松市郡山台遺跡(二本松市)、史跡範囲の確認調査のための米山寺経塚周辺の調査(須賀川市)、史跡環境整備のため実施した上人壇廃寺の調査(須賀川市)などである。これらを便宜上保存調査として一括したが、破壊を前提とした調査が多い中で保存調査が全体の一〇%近くを占めたことは、貴重な成果であり、関係教育委員会の努力を高く評価すべきものがあろう。
さきに農業関係の発掘が多い点を指摘したが、ほ場整備関係は、遺跡全面にかかることが多く、いきおい調査面積も広く、調査期間が長く、調査費もかなりの額になる。今年度の調査は、一遺跡三百万円以上、調査期間も一か月以上のものが大部分であり、長期調査が一般化しつつあることを示している。
このような膨大な調査需用に対し、本県内の体制はまたじゅうぶんでなく専門的な調査体制は県教育委員会の新幹線調査体制(十四名)と、いわき市の朝日長者遺跡調査体制(五名)、須賀川市の上人壇廃寺調査体制(二名…一名兼任)のみであり、その他の調査は臨時に研究者等に依頼してチームを編成して対処する以外にない。
このため、今年度は学校の夏期休暇期間を利用し、教員・大学生・民間研究者・県市町村関係者等の総動員により調査が実施された。
以下、県教育委員会が主体となった発掘調査を中心に紹介したい。
一、県教育委員会発掘調査
(1)孫六橋遺跡(福島市宮代字孫六橋)
福島盆地のほぼ中央にある遺跡であり、宮代山王様の北約四百メートルにある。標高は六十メートル以下で、はんらん原の微高地上に位置している。東北新幹線工事に先立ち、記録保存のため四月十二日から六月十八日にかけて発掘調査を行った。
調査の結果、東北地方の初期の弥生式土器と各種の石器が発見され、またこれらの遺物を伴う土壙と、石器とともに剥片(石を打ち欠いたときの破片)が伴出し、石器製造の跡とも考えられる竪穴遺構が発見された。東北地方初期弥生時代の石器の組成は今まで不明確であり、縄文時代との比較対照の資料として、あるいは稲作の波及の問題等を検討するための貴重な資料として今後の整理・検討に期待される。なお弥生時代の遺構、遺物以外に(土師器)
(注) 緊急調査の50年度の件数には、国の機関等からの通知の件数を含む。