教育福島0017号(1976年(S51)12月)-019page

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心部の形態のは握、そのほか官衙と関連のある周辺遺跡の調査等、長期的調査が必要とされる。

 

二、主な市町村教委の発掘

 

〔朝日長者遺跡〕

いわき市教委が今年一月から十二月まで、約一年間の予定で調査中の遺跡である。原因は小名浜港の土取場として破壊されるため県企業局の負担により実施するもので、現在までの調査は次のような状況である。

〈写真〉石造遺構(約四千五百年前)

 

(福島市飯坂町月崎遺跡)

代の住居址から石製・土製の祭祀用遺物がいくつか発見され、注目されている。

 

弥生時代後期から古墳時代中期までを中心とする集落址であり、総数八十〜九十軒の住居址が推定され、本県内でも最大の集落と推定される。なお古墳時代の住居址から石製・土製の祭祀用遺物がいくつか発見され、注目されている。

 

〔清水台遺跡〕

郡山市教委が調査したもので、同市中央部にある官衙遺跡について、建築確認申請によりチェックし、改築時に調査を実施したものであり、今年三件を処理した。同遺跡は都市化が進み、大規模な調査は困難なため、改築時にその地区その地区を分割調査を行うものであり、建築確認申請によるチェックの方法と市街地発掘の新しい取り組み方として注目される。

調査結果は、掘込地業跡、掘立柱跡溝、瓦溜等とともに奈良〜平安時代の瓦、土師器、須恵器等が発見されている。現時点では部分的調査であるため大きな成果とはいえないが、今後の継続調査により清水台遺跡は貴重な記録保存ができるものと期待される。

 

〔上人壇廃寺〕

須賀川市教委により、三か年継続事業で、史跡上人壇廃寺の環境整備のための調査を実施しているもので、今年度の調査により、中門−塔−講堂−(金堂?)と一線上に並ぶ四天王寺式配置が想定されるに至った。東北地方では初めての例であり、大きな反響があると思われる。また瓦窯吐からの六角瓦塔片の出土、講堂北の溝中からの鉄製鉦鼓の発見など本県下の奈良時代廃寺の発掘調査としては、最大の成果をあげつつあるといえよう。

 

〔その他〕

縄文時代の調査としては、福島市月崎遺跡の調査がある。縄文中期の遺跡から日時計状の石組遺跡と長さ三・七メートルの日本最大級の複式炉の発見がある。古墳関係では、郡山市正直古墳の中期古墳の発掘、いわき市の壁谷作、白穴古墳、長沼町の六光内古墳、須賀川市の平内池古墳の調査がある。古墳時代以降の集落址としては、天栄村の舞台遺跡、河東村の古宮遺跡、二面硯出土の金屋遺跡などが主要なものとしてあげられる。なお官衙遺構あるいは寺院址と考えられるものに、二本松市の郡山台遺跡、相馬市の黒木田遺跡の調査があげられる。

 

三、第四会発掘技術講習会

 

郡山市教育委員会の協力をえて、柿内戸遺跡と中央公民館において八月上旬、十日間の埋蔵文化財発掘技術講習会を実施した。受講者は、市町村教育委員会の文化財担当者をはじめ、教員民間研究者(市町村推薦者)等十六名の申し込みがあり、全員を対象とした。本県内の主要遺跡、文化財保護法の解説をはじめ、現場でのグリット(地区割)設定から発掘・測量・土器復原、遺物の実測図の作成、報告書の作成まで一連の講習を行った。

受講生から、文化財の諸問題のほか更に高度な講習の要望があった。

 

以上、今年度の事業の概要をのべたが、十二月は中・下旬まで発掘調査を実施し、一〜三月は、今年度の整理、略報の刊行を行うことになる。

なお、この間、文化財保護係と共同で、遺跡地図のマイラ原図の作成の仕事も行うことになろう。

昭和五十二年度は、今年度以上に開発と埋蔵文化財保護との問題が多く、また深刻なものとなろう。開発の体制と経費に比して、埋蔵文化財の体制と経費はまだまだ比較にならない状態である。目下の急務は、県及び市町村における埋蔵文化財保護の担当者の確保にあると思われる。

市教委ではぜひ二〜三名の専門職の確保を図ってほしいものである。

 

 

 


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