教育福島0018号(1977年(S52)01月)-009page
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特選・研究論文
誤答事例からみた
生徒の思考の様相について
本宮町立本宮第二中学校教諭 国分長次
一、研究の趣旨
数学科における生徒の学力差は数学教育上の大きな問題となっている。生徒の学習をみると、小学校時代に習った計算ができない。また、自分勝手な方法でやって違っている場合が多い。その時になっていくら指導をくり返しても、最初にまちがって理解してしまったことから抜けきれない。一体、生徒はどのような思考から誤答への道を進むのだろうか。問題解決に当たって、どのようなつまずきがあるのだろうか。このような生徒の学習上の誤りやつまずきを明らかにしていくことは学習指導改善に欠かすことはできないものである。以上のような考えにたって、生徒の誤答事例をより多く調査し、そこから生徒の数学的な思考の様相をさぐろうと試みた。
二、研究の内容
(一) 研究課題
数学の指導をとおして、一つ一つの教材に対して、どのような誤答があるか、また、どうしてそのような誤答への思考が働くのかを明らかにする。
(1) 一つの教材に対してできるだけ多くの誤答事例を収集する。
(2) 誤答事例、解決への過程から、また生徒との対話から生徒の思考の様相を究明する。
(二) 研究の概要
(1) 式の計算における誤答傾向
式の計算において「かっこ」をはずせないために多くの誤答をまねいている。また、方程式の移項と混同したり、分数のある式では分母を払ってしまう傾向がある。その一例として、誤答の多かった(a−3)−(5a−7)について、誤答例と思考様相をあげて考察してみる。
(三) 考察
この計算では、誤答の要因になっているものに「文字の計算」と「正負の数の計算」の二つの不徹底がある。そのため、誤答の組み合わせとなり誤答率を高くしているものと考えられる。
文字式では「a」の意味がよくわかっていないことに原因している。すなわち「a=1a」に対する認識不足によるものである。正負の数の計算では、正負の数の絶対値をとった数の「加減」に終始しており、負の数を加えること、引くことの意味を全く理解していないことの誤答と考えられる。
〈指導上の留意点〉
○ a(b−e)−d(e−f)の型のかっこをはずす時、細心の注意を払いながら−d(e−f)=−de−dfと分配の法則の構造を随時指導する必要がある。
○ 能力の低い生徒に対しては−(−a)や−(+a)1の意味を具体的に指導する必要がある。
○ 正負の数の指導の徹底と随時指導に力を入れる必要がある。
○ a=1aの約束事項を簡潔化や単純化の意味をとおして具体的に理解させ、定着させるようにする。
(2) 二元連立一次方程式の解法にみら
れる思考様相について(略)
(3) 図形の論証における試行錯誤、前
提条件における誤った思考の定着、直観的で論理の記述がうまくできていない。などについて(略)
生徒の思考は各人、種々さまざまであること、そして、それに加えて洞察力の有無、試行しようとする意欲、課題意識の有無なども誤答の大きな要因になっており、これらを含めて今後の研究課題としていることを最後に述べている。
◇講評◇
(一) 生徒の学習のつまずきや誤答例を数多く収集し、その思考傾向をとらえ、学習指導の改善に役立てようとしており、教育研究としての価値は大きい。
(二) 資料収集や分析が計画的であり、研究成果を常に教育実践に生かし、生徒に還元しようとする研究態度はよい。
(三) この研究によって得られたいくつかの問題点や対策等を更に検討して、実際の学習指導に当たったとき、生徒一人一人の学習の変容がどのようになるかの検証を今後の研究に期待したい。
〈(a−3)−(5a+7)の誤答例〉
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〈(a−3)−(5a+7)の誤答例の文字の項と定数項の関係
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